十字架クルス)” の例文
幼児をさなごたちはみな十字架クルス背負しよつて、しゆきみつかたてまつる。してみるとそのからだしゆ御体おんからだ、あたしにけてくださらなかつたその御体おんからだだ。
打ち合せて居たんだ。仲間の割符わりふはあの四つ瓣の梅の眞鍮札さ、中に彫つてあるまん字、四つ瓣の花形、皆んな十字架クルスぢやないか
胸に、黄金こがね十字架クルスをかけていた。たった今、庭園で狂わしく啼いていた白孔雀しろくじゃくの姿を、少斎はそのまま想い出していた。
……や、ここに十字架クルスがある! 誰がここへ置いたのだ? 何んのためにマリヤを飾ったのだ! 俺は昔から天帝ゼウスに対して何んの尊敬も払っていなかった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「これでござるか、天草一揆の折、分捕った十字架クルスを鋳直した物でござる」と彼は得意らしい微笑えみを洩した。
恩を返す話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
さればこそ、われら、夢の覇絆きづなを破りて、もろ/\の偶像を足蹴あしげにし、十字架クルスをもちて、十字架クルスを抱かむかな。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
と、はだけたシャツの下から、取り出した十字架クルス接吻せっぷんするのだった。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
山上さんじやうの白き十字架クルスの見えそむる浦上道うらかみみちは霜どけにけり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
はゞかりてすがる十字架クルスや夜半の秋
不器男句集:02 不器男句集 (新字旧仮名) / 芝不器男(著)
さあ、ぐつすりるとしよう。耶蘇イエススよ。十字架クルスふあのしろ幼児をさなごたちをも、夜々よるよるむらしたまへ。われまことにかくねがたてまつる。あゝむくなつた。われまことにかくねがたてまつる。
これでは工夫にも相談相手にもなりません、人に見られては大変と、祈祷書と十字架クルスを手筐に入れようとして見ると、手筐の底にもう一つ、小さい紙切が入って居ります。
おまけに、太刀を打ち合うごとに、その男が胸に吊している十字架クルスが甚兵衛の目を射た。彼はその十字架に不思議な力が籠っているように思って、一種の魅力をさえ感じた。
恩を返す話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
美剣を吊るし、胸に十字架クルスをかけた太守が、その夕方にはきっと、祭壇の前に現われた。
確かに十四年前だな? ……これ娘顔を上げろ! おおいかにも酷似そっくりだ! 夏彦の容貌かお酷似そっくりだ! 因果な娘よ不義のかたまりよ、立って十字架クルスの前へ行け! そこにある首級くびがお前の親父おやじだ。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いまこそ、わらわの憎しみを知ったであろうのう。そもじを十字架クルスに付ければとて、罪はあがなえぬほどに底深いのじゃ。横蔵をあやめ、慈悲太郎を殺したそもじの罪は、いまここで、わらわが贖ってとらせるぞ。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
その懐から十字架クルスとポルトガル語の祈祷書が現われた為に、狂人と言う身寄りの者の申立も通らず、明暦三年松が取れると間もなく、鈴ヶ森で磔刑はりつけにあげられることになって終いました。
幼児をさなごしろ蜜蜂みつばち分封すだちのやうに路一杯みちいつぱいになつてゐる。何処どこからたのかわからない。ごくちひさな巡礼じゆんれいたちだ。胡桃くるみ白樺しらかんばつゑをついて十字架クルス背負しよつてゐるが、その十字架クルスいろ様々さまざまだ。
意気地なく十字架クルスをすてて生きのびているころびばてれん!
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「島太夫、十字架クルスの前へ行け、この包物つつみを開けて見ろ!」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
思い切って封を破って蓋を払って見ると、中から出て来たのは、銀の十字架クルスと、半紙を二、三十枚綴じた本が一冊、これはポルトガル語を仮名にして書いた祈祷書で、その第一頁目を開くと