加担かたん)” の例文
旧字:加擔
ところが、相手という者が、お綱の恋する弦之丞——ときいて、彼の心がにわかに変ったのである、すぐに加担かたんする気になった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「大石殿のことまでは、われら風情には力及ばぬ。ただ兄として弟がそんな大事に加担かたんするのを見てはおられぬと申すのじゃ」
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
「がんりき、貴様は、南条、五十嵐の一味が容易ならぬ陰謀を企てていることを知って彼等に加担かたんしているのか、知らずして働いているのか」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
従兄弟の為めに多少尽すことが出来たと思って満足に感じたが、こんな陰謀いんぼう加担かたんしていると兎角後ろ暗い。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
宇治はその時はっきりと逃亡の決意をかためていたのだ。だから最も逃亡に加担かたんしやすい下士官を選ぶべきであった。それにもかかわらず彼は高城をえらんでしまった。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
「お藤が、おれに加担かたんしてお艶をかどわかしたために、刀をうばいそこねたといってな、左膳め、先日からたけりたっておるのだから、そのつもりで年寄り役にとりしずめてくれ」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「待ってくれ、八。そう言うと仙台様が磯の安松に加担かたんでもしたように聞えるが——」
西か、東か、いずれへ加担かたんするかの去就二途の迷いは、おそらく全国的なものであろう。ただ美濃尾張は、その縮図にすぎない。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この二人が徳川へ加担かたんしたからと言って、長州へ味方をしたからと言って、天下の大勢にはいくらの影響もあるものでないことは、二人ともよく知っているはずであります。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その前から、新免伊賀守の手について、浮田方へ加担かたんした者とわかっているゆえ、この宮本村まで追いつめて来たところじゃ。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「すでに兄上こそ、以前ここへお訪ねあった日野朝臣などと、密々、宮方みやかた加担かたんめいをむすんでおられたのでございましょうが」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんとなれば、この播磨、備前などは、笠置に火の手が揚ッたさい、宮方加担かたんの色をみせた武族がかなりあった地方なのだ。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、彼は、このたびの出軍に際して、そのいずれに加担かたんするも、下策げさくとなしていた。兵を具し、陣は張ったものの、これは一時の擬態ぎたいだった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その花房助兵衛をもって、戸川肥後守を説かせ、四老のうち、二人までは、まず秀吉加担かたんに傾いたところで、官兵衛は直接、宇喜多直家に会って
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すぐ隣村の豪族は毛利加担かたんか織田の味方か、またわずか河一つへだてた小城の性格でも、いったいそのいずれに組みそうとしている肚なのか、ほとんど
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
紀州根来衆ねごろしゅう、北越の佐々さっさ、関東一円も当方に加担かたん呼応あるべく、織田有縁うえんの諸侯、池田、蒲生がもうなどの参加も疑いない。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「上杉家へは、べつに大坂表から、すぐ密使をやって、おことらへ、加担かたんするように申しておく。その辺も、心配すな」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——奥州平泉ひらいずみの豪族が、おごり振舞う平氏の世を憎んで、やがて源家へ加担かたんの下地でなくて何であろう。これは、世の中が、ちと面白くなりそうだの」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はて、事難しゅうなって来たの。では、他日尊氏どのが東上のさい、時を期して、この正成に、宮方を裏切って足利方へ加担かたんせいとの、おすすめか」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すなわち勝入父子が、去就きょしゅう一決と同時に、木曾川第一の要地を占領して、秀吉へ加担かたん引出物ひきでものとした快報であった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも、五人の偽菩薩にせぼさつの顔色をジロリと見ると、もし自分が石見守いわみのかみ加担かたんして、いな、と一ごんッぱねれば、どういう手段しゅだんにもうったえかねない底意そこいがよめる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(どうだ、寝返って、羽柴筑前どのに、加担かたんしないか。衆目しゅうもくの見るところ、十指のたとえ。秀吉公の将来と、信雄卿の将来とでは、比較にならぬ。いまが、考えどきだぞよ)
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浅井の旧臣阿閉あべ淡路守の浪人兵で、おそらく光秀に加担かたんしてのことだろうと思われまする。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『それや、親父のほうがいかんわ。わしは三太夫殿に加担かたんする、連れて行ってやんなさい』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分に加担かたんしろ、信長とはそんな人なのだ——と度々口説くどきおったが、自分として彼らの詭弁きべんと一笑に附しても正直、かくまでの事情とも御存じなく、お疑いをかけられるとは
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神戸信孝かんべのぶたかの手からは、蒲生氏郷がもううじさとを説かせ、丹羽長秀へ加担かたんの申し入れ、また、勝家自身としても、遠く東海の徳川家康へ音信して、それとなく家康の意中を打診してみるよう、昨今
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、藤左衛門は、ほぞちかった。血を見たら、衆は衆を呼ぶだろうし、駅路の規定にも触れ、吉良方に加担かたんの役人でも出たら猶更なおさらの事だ。遅れた上にも、日数ひかずに暇どってしまうだろう。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
分ったが、それは断り手紙ではないか。蜂須賀の一族は、先代以来、斎藤家とは切っても切れぬ旧縁のある間がら——織田に加担かたんは義において出来ぬと、明白に断りの書いてあるものを
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
情熱的な加担かたんを示して、北陸一帯の反秀吉気勢を一手にひきうけていた佐々成政の潰滅かいめつをも、じっと坐視しているに至っては、血の気の多い三河武士が、黙っていられないのも無理はない。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、秀吉ひでよしをあらそううえにも、つねに背後はいごの気がかりになる伊那丸君いなまるぎみやそれに加担かたんのものを、どんな犠牲ぎせいはらっても、根絶ねだやしにしなければならぬと、ひそかに支度したくをしつつあるのだから
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
織田家へ加担かたんを見せてくださるお心はありませんか
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
氏真うじざねって、今川加担かたんをつづけてゆくか。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
従来どおり今川家に加担かたんで通すか。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)