たもつ)” の例文
しかしたもつさんは少時帆足の文を読むごとに心たいらかなることを得なかったという。それは貞固のひとりを愛していたからである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一 人の妻と成ては其家を能くたもつべし。妻の行ひ悪敷あしく放埒なれば家を破る。万事つづまやかにしてついえなすべからず。衣服飲食なども身の分限に随ひ用ひておごること勿れ。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
やや傾けたる丸髷まげかざりの中差の、鼈甲べっこうの色たらたらと、打向う、洋燈ランプの光透通って、かんばせの月も映ろうばかり。この美人たおやめは、秋山氏、蔦子つたこという、同姓たもつの令夫人。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
村井たもつは、映画雑誌、シネマ時報の編集主任で、年齢としは三十四歳、雑誌記事のことで、東京キネマのスタジオへ出入りしているうちに山上みさをと知り合いになり
アパートの殺人 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
たもつか。——内門ないもんの廊の袖に床几しょうぎをおけ。そしてすぐ軍議をひらこう。昨夜らいの物見の情報も聞きたい。——義助をはじめ、堀口、大館おおだて、江口、世良田せらた、居あわす者はみな寄れと申せ」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
出ても余程成績が好くないと就職口がありません。お宅のたもつさんぐらいの頭は東京へ行くとザラにありますから、あの程度のものに学資をぎ込むのは引佐川へ金を流すのと大差ありますまい
ある温泉の由来 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いづれにしてもちひさなふねいまつめたいあさしづけさをたもつるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たもつさんの記憶している五百いおの話によるに、枳園はお召縮緬めしちりめんきものを着て、海老鞘えびざや脇指わきざしを差し、歩くにつまを取って、剥身絞むきみしぼりふんどしを見せていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
たもつや、又温泉の夢を見ているのかい?」
ある温泉の由来 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「瓜生たもつか。どこへ」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その他は皆写本で、徳富蘇峰さんの所蔵の『㦣語えいご』、富士川游さんの所蔵の『直舎ちょくしゃ伝記抄』およびすで散佚さんいつした諸書を除く外は、皆たもつさんが蔵している。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
たもつッ、瓜生保うりゅうたもつっ」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たもつっ、保っ」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)