おこ)” の例文
思慮分別の意識からさうなるのでは無く、自然的な極めて力強い餘儀ないやうな感情に壓せられて勇氣の振ひおこる餘地が無いのである。
水害雑録 (旧字旧仮名) / 伊藤左千夫(著)
子、魯の大師にがくげて曰く、楽は其れ知るべきなり。始めておこすとき翕如きゅうじょたり。之をはなてば純如たり。皦如きょうじょたり。繹如えきじょたり。以て成ると。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
それの年の大晦おほつごもりに常三郎の心疾がおこつて、母益は慰撫のために琴を弾じて夜闌やらんに及んだことさへあるさうである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
(七〇)同明どうめい相照あひてらし、(七一)同類どうるゐ相求あひもとむ。くもりようしたがひ、かぜとらしたがふ。(七二)聖人せいじんおこつて萬物ばんぶつる。
もし『孟子』にいうごとく「王者のあとみて詩亡び、詩亡びてしかる後に春秋おこれり」(『孟子』離婁下)であるならば、孔子の時には詩は亡んでいたのである。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
黄州禅智寺に宿せしに、寺僧皆な在らず、夜半雨おこり、尚ほ此の詩をおぼゆ。故に一絶を作る
道徳の旨を知らず、雕飾ちゅうしょく綴緝てっしゅうして、以て新奇となし、歯をかんし舌をして、以て簡古と為し、世において加益するところ無し。是を文辞ぶんじという。四者交々こもごもおこりて、聖人の学ほろぶ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
葛かつて酒を被り、たまたまその肆に坐し、手にまかせて繙閲す。一夕民家火おこり、およそあるところの物、文書をあわせてみな燼す。物主競い来たりて、数倍の売償を求む。民もって質験するなし。
同じき明光は互に相照らし、類を同じうする者は互に相求め、龍興れば雲之に從ひ、虎嘯けば風を生ずるが如く、聖人おこるときは天地の萬物皆其徳光を瞻仰す。
しかし此詩はわたくしに奇なる感をおこさしめた。それは大樹は唐朝にして長藤は宦官だとおもつたのである。平生わたくしは詩を読んで強ひて寓意を尋窮することを好まない。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
このひと おこからず
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
俊の病は今これをつまびらかにすることが出来ぬが、此冬やまひおこつた初に、俊は自ら起つべからざるを知つて、辞世の詩歌を草し、これを渋江抽斎の妻五百いほしめした。五百は歌を詠じて慰藉した。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)