人指指ひとさしゆび)” の例文
そしてそのかなり調子のなだらかな言葉を自分の髪の中に編み込む様に耳を被うてふくれた髪を人指指ひとさしゆびと拇指の間で揉んで居た。
蛋白石 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「さあ、もう御膳おぜんを下げたら好かろう」と細君をうながして、先刻さっき達磨だるまをまた畳の上から取って、人指指ひとさしゆびの先へせながら
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
つめたかぜひやりとると、ひだりうでがびくりとうごく、と引立ひつたてたやうに、ぐいとあがつて、人指指ひとさしゆびがぶる/″\とふるふとな、なにかゞくちくとおなじに、こゝろみゝつうじた。……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「さあ、もう御膳おぜんげたらからう」と細君さいくんうながして、先刻さつき達磨だるままたたゝみうへからつて、人指指ひとさしゆびさきせながら
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
と、天守てんしゆむねつて、人指指ひとさしゆびそらばすと、雪枝ゆきえあをつて、ばつたり膝支ひざつく。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其時蟻はもう死んでゐた。代助は人指指ひとさしゆびさきいた黒いものを、親指おやゆびつめむかふはぢいた。さうしてがつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
自分の指からじかにを食うなどと云う事は無論なかった。折々機嫌きげんのいい時は麺麭パンなどを人指指ひとさしゆびの先へつけて竹の間からちょっと出して見る事があるが文鳥はけっして近づかない。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「僕とまるで反対だね。——姉さん、このフライは何だい。え? さけか。ここんとこへ君、このオレンジの露をかけて見たまえ」と青年は人指指ひとさしゆびと親指の間からちゅうと黄色い汁を鮭のころもの上へ落す。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
前に客待の御者ぎょしゃが一人いる。御者台ぎょしゃだいから、この有様を眺めていたと見えて、自分が帽子から手を離して、姿勢を正すや否や、人指指ひとさしゆびたてに立てた。乗らないかと云う符徴ふちょうである。自分は乗らなかった。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼女は人指指ひとさしゆびを自分の鼻の先へ持って行った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)