亡者まうじや)” の例文
水中すゐちゆうよりあをき火閃々ひら/\ともえあがりければ、こは亡者まうじや陰火いんくわならんと目をとぢてかねうちならし、しばらく念仏して目をひらきしに、橋の上二けんばかりへだて
もとわたし対岸むかうに大きな柳のつて、其処そこ脱衣婆ばあさんて、亡者まうじや衣服きものをふんばいて、六道銭だうせんを取つてましたが、わたしはいけないといふ議論ぎろんがありました
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
仕つり其節そのせつ切腹せつぷく仕るべき覺悟かくごに候然らば當年中にはよも御對顏のはこびには相成まじく其内に眞僞しんぎ判然はんぜんも仕らんかと所存を定め候あひだ今晩こんばん亡者まうじや姿すがたにて不淨門の番人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「年増でも新造でも、凄からうが當り前の人間だらうが、亡者まうじやから手紙を貰ふやうな女は嫌ひだよ」
一度いちど何處どこ方角はうがくれないしまへ、ふね水汲みづくみつたときはまつゞきの椰子やしおくに、うね、かすと、一人ひとり、コトン/\と、さびしくあはいて亡者まうじやがあつてね
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
先に立つた見物人が足をとゞめてもとの墓地の名やたま/\ある墓標のぬしの姓氏を読んだり、又英米の旅客りよかくが自身の名を石壁せきへきの上にとゞめたりするので生きた亡者まうじやの線は幾度か低徊ていくわいする。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
坊さんは鸚哥のやうな法衣ころもて、鸚哥のやうに習ひ覚えたお経の文句を繰返して、それで無事に亡者まうじやを極楽へ送りつけたらしい得意な顔をしてゐたが、遺族の注意を聞くと、さつと顔色をかへて
亡者まうじやめく人びとあまた
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
明治めいぢ十年に西郷隆盛様さいがうたかもりさま桐野様きりのさま篠原様しのはらさまらツしやいまして、陸軍省りくぐんせうをおてになりました、それから身丈格好せいかつかうそろつた亡者まうじやを選んで、毎日々々調練てうれんでございます。
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「それに、重三郎が穴へ入るつもりで、中腰になつて、狹い入口を半分ほど入つた時、綱か何にか引いて、仕掛の石と材木を落したんだ。こんな器用なことは、狐や亡者まうじやに出來ることぢやねエ」