久方ひさかた)” の例文
「そうだ。お前も、知っているな。きやつが、久方ひさかたぶりに岩槻いわつきより出府して参って、たずねると申してきている。待たずばなるまい」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
火事の危険であった話や、父にたすけられた話や、久方ひさかたぶり、母との対面や何やかやで、雑炊ぞうすいを食べなどしているうち、夜は白々しらじらとして来ました。
新宇宙艇の二重になった丸い出入口は、久方ひさかたぶりで内側へ開かれた。一行四名はマスクをして艇長を先頭に外へ出ていった。
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
すなわち『万葉集』巻四の「念はじと曰ひてしものを唐棣花色はねずいろの、うつろひやすきわが心かも」、同巻八の「夏まけて咲きたる唐棣花はねず久方ひさかたの、雨うち降らばうつろひなむか」
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
画はうまく出来てゐるが、そば久方ひさかたの雲井の空の子規ほとゝぎすと書いてあるのは、何の事だか判じかねた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
物靜ものしづかにつヽましく諸藝しよげい名譽めいよのあるがなかに、ことのほまれは久方ひさかたそらにもひヾきて、つきまへちゆうなほときくもはれてかげそでにち、はなむかつて玉音ぎよくおんもてあそべばうぐひすねをとヾめてふしをやまなびけん
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
私は最近、二科の会場でパリ以来久方ひさかたぶりの東郷青児とうごうせいじ君に出会った、私は東郷君の芸術とその風貌ふうぼう姿態とがすこぶるよく密着している事を思う。なお特に私は彼自身の風貌に特異な興味を感じている。
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
久方ひさかたあま金山かなやま加佐米山かさめやま雪ふりつめり妹は見つるや
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
久方ひさかたの月のかつらのをりを得て
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
久方ひさかたの光に飛ぶを。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
父上……と聞いて、壺よりも、久方ひさかたぶりにめぐりあった左膳その人に、多大の関心を持っている櫛巻きお藤は、そそくさと膝できざみ出ながら
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
久方ひさかたぶりで懐しい日本人に会えたよろこびも、この沈没さわぎで煙のように消えてしまった。どうしてこうもよくないことが丁坊の行くところへ重なってくるのだろう。
大空魔艦 (新字新仮名) / 海野十三(著)
三四郎がのぞくやいなや隣の男はノートを三四郎の方に出して見せた。絵はうまくできているが、そばに久方ひさかた雲井くもいの空の子規ほととぎすと書いてあるのは、なんのことだか判じかねた。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その人は高村東雲たかむらとううんというかただが、久方ひさかたぶりに此店ここへおでなすって、安さん、誰か一人い弟子を欲しいんだが、心当りはあるまいか、一つ世話をしてくれないかと頼んで行ったんだ。
私は最近、二科の会場でパリ以来久方ひさかたぶりの東郷青児とうごうせいじ君に出会った、私は東郷君の芸術とその風貌ふうぼう姿態とがすこぶるよく密着している事を思う。なお特に私は彼自身の風貌に特異な興味を感じている。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
久方ひさかたの光に飛ぶを。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
まるでゲーテが、久方ひさかたぶりで街で愛人ベアトリッチェに行きあったような恰好であった。
脳の中の麗人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
正太は、その足で、久方ひさかたぶりにわが家の門をくぐった。
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)