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不人情
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ふにんじやう
私の
身に
近い
者となると
悉く
不人情に
成るのであらうか、
右を
向いても
左を
向いても
頼もしい
顏をして
居るは
一人も
無い、あゝ
厭な
事だと
捨てばちになりまして
女房をだまくらかして
妾の
處へ
注ぎ
込む
樣な
不人情は
仕度ても
出來ない、あれ
丈腹の
太い
豪いのでは
有らうが、
考へると
此處の
旦那も
鬼の
性さ、二
代つゞきて
彌々根が
張らうと
お
老婆さんは
中風で
死ぬし、お
絹さんはお
嫁に
行くを
厭がつて
裏の
井戸へ
飛込んで
仕舞つた、お
前は
不人情で
己れを
捨てゝ
行くし、もう
何も
彼もつまらない、
何だ
傘屋の
油ひきなんぞ
其都度紛失物が
出來ますやら
品物の
破損などは
夥しい
事で、
何うすれば
此樣なに
不人情の
者ばかり
寄合ふのか、
世間一體が
此樣に
不人情なものか、それとも
私一人を
歎かせやうといふので