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一閑張
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いっかんばり
ふりがな文庫
“
一閑張
(
いっかんばり
)” の例文
床
(
とこ
)
の
間
(
ま
)
には遊女の
立姿
(
たちすがた
)
かきし墨絵の
一幅
(
いっぷく
)
いつ見ても掛けかへられし事なく、その前に据ゑたる机は
一閑張
(
いっかんばり
)
の極めて粗末なるものにて
書かでもの記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
照子はくすくす、「五十五銭にいたしておきます、
一閑張
(
いっかんばり
)
のお机にはうつりが
好
(
よ
)
うございますよ。一円ならお
剰銭
(
つり
)
をあげましょうか。」
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蝋塗
(
ろうぬ
)
りに
螺鈿
(
らでん
)
を散らした、見事な
鞘
(
さや
)
がそこに落散って、外に男持の煙草入が一つ、
金唐革
(
きんからかわ
)
の
叺
(
かます
)
に、そのころ圧倒的に
流行
(
はや
)
った
一閑張
(
いっかんばり
)
の筒。
銭形平次捕物控:116 女の足跡
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
連翹
(
れんぎょう
)
に
一閑張
(
いっかんばり
)
の机かな」という子規居士の句ほど客観的ではないが、元禄の句としては最も客観的な部類に属するであろう。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
玄関から座敷へ通って見ると、寺尾は真中へ
一閑張
(
いっかんばり
)
の机を据えて、頭痛がすると云って鉢巻をして、腕まくりで、帝国文学の原稿を書いていた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
表座敷へ戻って、向の山の傾斜がよく見えるようにと、三吉はすっかり障子を開け
展
(
ひろ
)
げた。正太も広い部屋の真中へ大きな
一閑張
(
いっかんばり
)
の机を持出した。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
離れの
一閑張
(
いっかんばり
)
からは左手の指紋ばかりしかあらわれなかったに反し、
母屋
(
おもや
)
の金庫に残っていた指紋には左右両手のものがあったので、母屋を襲った凶賊は
祭の夜
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
時雄の書斎にある西洋本箱を小さくしたような本箱が
一閑張
(
いっかんばり
)
の机の傍にあって、その上には鏡と、
紅皿
(
べにざら
)
と、
白粉
(
おしろい
)
の
罎
(
びん
)
と、今一つシュウソカリの入った大きな罎がある。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
銀子が顔を直し、
仕度
(
したく
)
をして行ってみると、薄色の
間
(
あい
)
の背広を着た倉持は、大振りな
赭
(
あか
)
い
一閑張
(
いっかんばり
)
の卓に
倚
(
よ
)
って、緊張した顔をしていたが、
看
(
み
)
ると鞄が一つ床の間においてあった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
善通寺
(
ぜんつうじ
)
の荒物屋で見かける品に、
一閑張
(
いっかんばり
)
の
塵取
(
ちりとり
)
で、とても便利なものがあります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
五つ
衣
(
ぎぬ
)
を
剥
(
は
)
ぎ、金冠をもぎとった、爵位も金権も何もない裸体になっても、離れぬ美と才と、彼女の持つものだけをもって、粛然としている。黒い
一閑張
(
いっかんばり
)
の机の上には、新らしい聖書が置かれてある。
柳原燁子(白蓮)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
山吹に
一閑張
(
いっかんばり
)
の机かな 子規
俳句とはどんなものか
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
奥座敷の
中央
(
まんなか
)
には、正太が若い時に手ずから張って漆を
抹
(
は
)
いたという大きな
一閑張
(
いっかんばり
)
の机が置いてある。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
一閑張
(
いっかんばり
)
の机を取巻いて家族が取交す晩餐の談話というのは、今日の昼過ぎ何処そこの叔父さんが来てこの春の母が病気の
薬代
(
くすりだい
)
をどういったとか、
実家
(
さと
)
の父が免職になったとか
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
すなわち
傍
(
かたわら
)
なる
一閑張
(
いっかんばり
)
の机、ここで書見をするとも見えず、
帙入
(
ちついり
)
の歌の集、
蒔絵
(
まきえ
)
の
巻莨入
(
まきたばこいれ
)
、銀の吸殻
落
(
おとし
)
などを並べてある中の呼鈴をとんと強く、あと二ツを軽く、三ツ押すと、チン
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「そうです。この
一閑張
(
いっかんばり
)
の机にもたれて右手のない男と話をしていました」
祭の夜
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
しかし宿屋と違って同じ時間に起きる必要はありません。片方が起きても、片方は寝たいだけ寝ていられます。私は兄さんをそっとしておいて、次の座敷に
据
(
す
)
えてある
一閑張
(
いっかんばり
)
の机に向う事ができます。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
玉木さんはここへ世話に成ってから最早その部屋の壁も、夏の日の射した障子も見飽きたという様子で、小父さんから借りた
一閑張
(
いっかんばり
)
の机の前に寂しそうに坐っていた。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
厚衾
(
あつぶすま
)
二組に、座敷の大抵狭められて、廊下の障子に
押
(
おし
)
つけた、
一閑張
(
いっかんばり
)
の机の上、抜いた
指環
(
ゆびわ
)
、
黄金
(
きん
)
時計、懐中ものの
袱紗
(
ふくさ
)
も見え、体温器、
洋杯
(
コップ
)
の類、メエトルグラス、グラムを刻んだ
秤
(
はかり
)
など
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“一閑張”の解説
一閑張(いっかんばり)とは、日本の伝統工芸品である紙漆細工のこと。またはその紙漆細工を作る方法のこと。一貫張と書かれることもある。
(出典:Wikipedia)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
閑
常用漢字
中学
部首:⾨
12画
張
常用漢字
小5
部首:⼸
11画
“一閑”で始まる語句
一閑
一閑斎
一閑斎殿
一閑釣瓶