一盃いっぱい)” の例文
文「どうぞ宜しく頼む、なるたけ人に知れぬよう、万一逃がしたら百日のなんとやら、そう事が分ったら一盃いっぱいやりましょう、これ町や」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
細君の心を尽した晩餐ばんさんぜんには、まぐろの新鮮な刺身に、青紫蘇あおじその薬味を添えた冷豆腐ひややっこ、それを味う余裕もないが、一盃いっぱいは一盃とさかずきを重ねた。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
およそ一箇月ばかりたって本当の喫烟客になった。処が例の酒だ。何としても忘れられない。卑怯ひきょうとは知りながら一寸ちょい一盃いっぱいやって見るとたまらない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その日に自分がるだけの務めをしてしまってから、適宜いいほど労働ほねおりをして、湯にはいって、それから晩酌に一盃いっぱいると、同じ酒でも味がちがうようだ。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
とかく一盃いっぱいを交えるまでは打解けた気分にならぬなども、今は弊害百出だが、基づくところは皆この原理から出ている。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「ハア吾々なんざア駄賃取りでもしてたま一盃いっぱいやるより外に楽しみもないんですからな。民子さん、いやに見せつけますね。あんまり罪ですぜ。アハハハハハ」
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
取り出した物は大きなびん、彼はたもとからハンケチを出して罎の砂を払い、更に小な洋盃コップ様のものを出して、罎のせんぬくや、一盃いっぱい一盃、三四杯続けさまに飲んだが、罎を静かに下に置き
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
一寸ちょっと来い、/\、今一盃いっぱいやろうと云うんだ、おとっさんのお帰りのないうちに、今日はちとお帰りが遅くなるだろう
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そして底のへり小孔こあながあって、それに細い組紐くみひもを通してある白い小玉盃しょうぎょくはいを取出して自ら楽しげに一盃いっぱいあおいだ。そこは江戸川の西の土堤どてあがばなのところであった。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
此方こっちは百五十か其処辺そこらの金を見付出みつけだしてようや一盃いっぱい飲で帰る所だ。忌々敷いまいましい奴等だ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
大「のう林藏、是迄しみ/″\話も出来んであったが、今日きょうは差向いでゆっくり飲もう、まア一盃いっぱいいでやろう」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
金八ほどの者も右左を調べることを忘れて、一盃いっぱい食わせられたのである。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
大「いや勧めの酒はの幾許いくら飲んでもうまくないので、宅へ帰ると矢張また飲みたくなる、一寸ちょっと一盃いっぱいけんか」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
エ、ペンペン草で一盃いっぱい飲まされたのですか、と自分が思わずあきれて不興ふきょうして言うと、いいサ、かゆじゃあ一番いきな色を見せるというにくくもないものだから、と股引氏はいよいよ人をちゃにしている。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
吉原帰りは田町のはまぐりへ行って一盃いっぱいやろうと皆其のうちへ参ります。
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
武「うむ是は堪らん、では近附ちかづきの為に一盃いっぱい
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
武「では一盃いっぱい戴こうか」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)