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たうけ
我々が手に下されん事は
勿體なし
御幼年の内は
御預り申
上御成長遊し候後は
太守樣の御元へ
御返し申上
何方へなりとも然るべき方へ
御養子に入らせらるゝ樣に
御取計ひ有て
宜しかるべし
當家相續などとは思ひも寄らず私し今日より
御乳を
いろ/\の
厚き
待遇を
受けた
後、
夜の八
時頃になると、
當家の
番頭手代をはじめ
下婢下僕に
至るまで、
一同が
集つて
送別の
催をする
相で、
私も
招かれて
其席へ
連なつた。
えへゝゝ
御冗談ばかり、おからかひは
恐入ります、えゝ始めまして……(
丁寧に
辞儀をして)
手前は
当家の
主人五左衛門と
申す
至つて
武骨もので、
何卒一
度拝顔を
得たく
心得居りましたが
アヽ
当家でも
此頃斯いふ
営業を始めたのぢや、
殿様も
退屈凌ぎ——といふ
許でもなく
遊んでも
居られぬから
何がな
商法を、と
云ふのでお
始になつたから、
何うかまア
諸方へ
吹聴して
呉んなよ。