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くわうけい
が、
私の
心の
上には、
切ない
程はつきりと、この
光景が
燒きつけられた。さうしてそこから、
或得體の
知れない
朗な
心もちが
湧き
上つて
來るのを
意識した。
其外の百
姓家とても
數える
計り、
物を
商ふ
家も
準じて
幾軒もない
寂寞たる
溪間! この
溪間が
雨雲に
閉されて
見る
物悉く
光を
失ふた
時の
光景を
想像し
給へ。
奇樹崖に
横たはりて
竜の
眠るが
如く、
怪岩途を
塞ぎて
虎の
臥すに
似たり。
山林は
遠く
染て
錦を
布き、
礀水は
深く
激して
藍を
流せり。
金壁双び
緑山連りたるさま画にもおよばざる
光景也。