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麥藁帽
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むぎわらばう
旅商人も
行けば、
蝙蝠傘張替直しも
通る。
洋裝した
坊ちやんの
手を
曳いて、
麥藁帽が
山腹の
草を
縫つて
上ると、
白い
洋傘の
婦人が
續く。
宗助は
着流しの
儘麥藁帽を
手に
持つた
友達の
姿を
久し
振に
眺めた
時、
夏休み
前の
彼の
顏の
上に、
新らしい
何物かゞ
更に
付け
加へられた
樣な
氣がした。
闇にも
歡びあり、
光にも
悲あり
麥藁帽の
廂を
傾けて、
彼方の
丘、
此方の
林を
望めば、まじ/\と
照る
日に
輝いて
眩ゆきばかりの
景色。
自分は
思はず
泣いた。
くしやりと
麥藁帽を
踏み
潰して
仕舞つた。