鶴翼かくよく)” の例文
謙信はこれをみてとり、その旗本を鶴翼かくよくの陣、即ち横にひろがる隊形に展開して、八幡原の信玄の旗本めがけて槍刀を揮って突撃した。
川中島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
府中城の大手に向って、奔河ほんがの羽柴勢は、鶴翼かくよくのひらきを示した。そしてただ千瓢せんぴょうの馬印だけが、しばらく動かずにあった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と声を掛け、やがてユラリと打ち乗ると、次第に集まる軍勢を、右に左に伍を組ませ、見る見る鶴翼かくよくに陣立てしたのは、さすがに老功の手練である。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
右翼に酒井忠次ただつぐと織田の援軍との混合隊をはいし、左翼に石川いしかわ、小笠原、松平、本多の軍を置き、そのうしろぞなえにみずから本陣を張って鶴翼かくよくのかまえをとった。
死処 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
かひなは伸べて鶴翼かくよくのやう
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
いつでも早速に相変化転そうへんけてんするのが陣形の本質で、鶴翼かくよくでも蛇形だけいでも鳥雲ちょううんの陣でも、そのままに固執こしつしたりするのでは、死陣であって活陣ではない。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
茶臼山の前までおし詰め、ここの先手本多出雲守忠朝いずものかみただともの備えより少し左に、鶴翼かくよくに陣を張った。
忠直卿行状記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
と、一団が鶴翼かくよくをなした。宏大な森林を横へ拡がり、横隊をなして走らせて行く。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かひなは伸べて鶴翼かくよくのやう
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
鶴翼かくよくのかたちをひろげ、一見、大兵と見えますが、二陣、三陣とも奥行はうすく、家康の中軍とても、たかの知れた小勢で守られているに過ぎません。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鶴翼かくよくをなして駆け入って、忽ち魚鱗に一変し、ふたたび鶴翼に散開し、さらに魚鱗に備えを変え、さながら一心同体かのように、開いては閉じ閉じては開き、眼にあまる寄せ手の大軍を
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ほかを見れば味方の影はさんとしてどす黒い。鶴翼かくよくも車掛りの陣形もはやあったものではない。支離滅裂だ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つづいて焔々えんえんたる松火の火が百余り鶴翼かくよくに展開された。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
藤蔵はその前にひざまずいて、田ノ尻、岐阜ヶ嶽、こうべ狭間はざまの三高地にわたって、三段備え鶴翼かくよくの陣をとった池田軍のくばりを、てのひらを指すように、説明した。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つまり十隊二陣が鶴翼かくよくとなって敵をつつむ。そしてまたべつの二隊は舟軍として水路を行き、敵の想像もなしえぬ地点から上陸してきょをさらにくという兵略だった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「各〻に憂いはない。だが、それがしの眼で、全陣地を見るところ、殿の御本陣を中心に、鶴翼かくよく(横隊陣)の右翼にすこしも戦気がない。そこの弱点が気がかりではある」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つづみを合図に、両軍それぞれの大兵が、鶴翼かくよく鳥雲ちょううん水流すいりゅう車輪しゃりん陰陽いんよう三十六変の陣形さまざまに描いてみせ、最後にはわあああっ……と双方起って乱軍となり、そこかしこで
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
虎衛軍こえいぐん五万、槍騎隊三千、儀仗一千、戦車、石砲、弩弓手どきゅうしゅ、鼓手、螺手らしゅ干戈隊かんかたい、鉄弓隊など四団八列から鶴翼かくよくにひらき、五行に列し、また分散して鳥雲の陣にあらたまるなど
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みわたせば、いつのまにやら、徳川とくがわ三千の軍兵ぐんぴょうは、裾野すその半円を遠巻とおまきにして、焔々えんえんたる松明たいまつをつらね、本格の陣法くずさず、一そく鶴翼かくよくそなえをじりじりと、ここにつめているようす。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鶴翼かくよくの中心——やや退がったところの、尾の位置に、かれは将座をすえて
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うなじは、俯向うつむき、到底、列座の公卿たちを正視することなどできないものであるのに、範宴少僧都は、じるいろもなく、きぬたの打目のぴんと張った浄衣じょうえ鶴翼かくよくのようにきちんと身に着け、ひとみ
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あッ、いけない。あれはおそろしい鶴翼かくよくの計略」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鶴翼かくよくの陣形です」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鶴翼かくよく!」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)