馳出かけだ)” の例文
かぜでもいてくりえだれるやうなあさとうさんがおうちから馳出かけだしてつてますと『たれないうちにはやくおひろひ。』とくりつて
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
お客の前へ小供が馳出かけだして阿母おっかさんアレなぞと菓子皿へ指をさすのはあんまり見っともい事でない。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ロレ いや、かしこゆるうぢゃ。馳出かけだもの蹉躓けつまづくわい。
ある日、私は表の方から馳出かけだして來まして、格子を開けて上らうとする拍子にあががまちに激しく躓きました。私の身體は飛んで玄關に轉げました。
お爺さんが止めるのも聞かずに、馳出かけだして行きました。この子供が木の実を拾いに行きますと、高い枝の上に居た一橿鳥かしどりが大きな声を出しまして
二人の兄弟 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
やすい調子で、正太はそこに立ったままお雪に尋ねてみた。子供は、知らない大人に見られることをじるという風であったが、馳出かけだそうともしなかった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
近所の子供が礼を言って、馳出かけだして行った後でも、まだお雪は耳を澄まして、小さな下駄の音に聞入った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その子供が復た馳出かけだして行った後でも、親子は時を惜むという風で、母の方は稲穂をこき落すに余念なく、子息むすこはその籾をたたく方に廻ってすこしも手を休めなかった。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「父さんが帰って来た時、車の上から繁ちゃんに声を掛けたろう。父さんにはぐ繁ちゃんだということが分った。あの時、お前は妙な返事をして馳出かけだして行ったじゃないか」
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
洋燈ランプの側にうとうとしていた猫が、急に耳を振って、物音に驚いたように馳出かけだしたので、奥様も私も殿方の御噂さをめて聞耳を立てていますと、須叟やがて猫は御部屋へ帰って来て
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と復た岸本が言うと、子供等は馳出かけだして行って、「もう沢山、もう沢山」と彼の方で言っても聞入れないほど沢山なリモオジュ土産を彼の前にあるテエブルの上に置いて見せた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
とうさんは榎木えのきあかくなるのがつてられませんでした。ぢいやがめるのもかずに、馳出かけだしてひろひにきますと、たかえだうへた一橿鳥かしどりおほきなこゑしまして
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そこに遊んでいた子供の中には、それを聞きつけて、急に馳出かけだすのもあった。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
向うの暗い方から馳出かけだして来て、見ている前で戯れ合って、急に復た暗い方へ馳出して行く犬の群もあった。やがて三四時間もしたら白々と明けかかって来そうな短い夏の夜の空がそこにあった。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
中には月あかりの中を馳出かけだして行くのもあった。三吉は姪を庇護かばうようにして、その側を盗むように通った。表の門から入って、金目垣かなめがきと窓との狭い間を庭の方へ抜けると、裏の女教師の家でも寝た。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と言ひ放ちながら、急に家の方へ馳出かけだして行つて了ひました。
馳出かけだしの小僧にすら遠く彼は及ばなかった。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)