阻害そがい)” の例文
そこで呼吸の内外に通ずるのを余程阻害そがいして行くような心持をもってじっと草原の中に坐り込んで居ると大分に血の出ようが少なくなった。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
いかれる獅子ししのまえにはなにものの阻害そがいもない。忍剣はいま、さながら羅刹らせつだ、夜叉やしゃだ、奸譎かんけつ非武士ひぶし卑劣ひれつ忿怒ふんぬする天魔神てんましんのすがただ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
想像力は理知の活動とは全然別作用で、理知の活動はかえって想像力のために常に阻害そがいせらるるものと信じている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
我々の生命を阻害そがいする否定的精神の象徴しょうちょうである。保吉はこの物売りの態度に、今日きょうも——と言うよりもむしろ今日はじっとしてはいられぬ苛立いらだたしさを感じた。
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一方『赤外線男』という『男』の観念がすっかり普及していてお嬢さんに眼をつけることが阻害そがいされた。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
僕自身は宗教なき教育は人の心髄しんずいを動かすものでないと信ずるけれども、しからばとて学校の課目に宗教を入れることは、かえって教育の目的を阻害そがいするものと思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
阻害そがいすべき何らの理由ももっていない。ただし我々だけはそれにお手伝いするのはごめんだ!
かれなはふにも草鞋わらぢつくるにも、それある凝塊しこりすべての筋肉きんにく作用さよう阻害そがいしてるやうで各部かくぶ疼痛とうつうをさへかんずるのであつた。器用きようかれ手先てさき彼自身かれじしんものではなくなつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
季節きせつあつくなればあめがあつて三ないうちには雜草ざつさうおどろくべき迅速じんそく發育はついくげる。それがいちじるしく作物さくもつ勢力せいりよく阻害そがいする。それだけ收穫しうくわく減少げんせうきたさねばならぬはずである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その学問や、その学問の研究を阻害そがいするものが敵である。たとえばひんとか、多忙とか、圧迫とか、不幸とか、悲酸ひさんな事情とか、不和とか、喧嘩けんかとかですね。これがあると学問が出来ない。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)