鏖殺おうさつ)” の例文
これはいわゆる勤王方に対する、幕府の手先としての新撰組の正面襲撃であったが、後の高台寺鏖殺おうさつは、朝幕浪士の争いとは言えない。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
(二)右ノ報告ヲ本日午後十時マデニ報告シ得ザルトキハ、在京ざいきょう同志ハことごと明朝みょうちょうヲ待タズシテ鏖殺おうさつセラルルコトヲ銘記めいきセヨ。
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「日本人なんかそう怖くもないが、なんだかあの美人のことが気になってね、それに、ローゼン家を鏖殺おうさつしたのだからね」
警察署長 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
が、十門に近い敵の野砲は、やすやすとその鏖殺おうさつ事業をやっている。六百メートルという近距離の射程では、地面を這う昆虫をさえ逃さなかった。
勲章を貰う話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
みんな賊をあざむく為の非常手段です。今度の賊は犯罪史上に前例もない程恐ろしい奴です。四十年の間考えに考え抜いて着手した一家鏖殺おうさつ事業です。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かねがね、海道の宿駅に撒いておいた諜者から、矢作やはぎにおける使者鏖殺おうさつの件を、云々しかじかと、早馬で知らせてきたのである。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの薬は使い方一つで、一家鏖殺おうさつ位、訳なく出来る劇毒薬で、昨夜は少し利き過ぎなかったかと心配した。自分のほかに、もう一人、此の島で此の秘法を
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
又一説に、圓一は家康の間牒として甲斐に入り、武田家の機密を探ったので、信玄が領内の盲人八百人を鏖殺おうさつしようとしたのはそれが原因であったと云う。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
また脚船を押寄せ支うるならば、急に飛附き、長鳶口ながとびくち、長熊手、打鈎うちかぎを以て引寄せ乗うつり船中の夷輩を鏖殺おうさつし脚船を奪うべし〔何ぞ壇の浦の戦に似たる〕。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
最初この日野を焼いて野鼠蟄虫を鏖殺おうさつし、その夜家鼠を饗して、汝ら野鼠ごとく焼き殺さるるを好まずば年中音なしくせよ、さすればこの通り饗応しやると
ご領主の兵と戦っては、千に一つの勝ち目もなく、青塚の郷は亡ぼされ、郷民は鏖殺おうさつされるのであったが、ここに一つだけ味方にとって、非常に有利なことがあった。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
可哀相に、その幼児は大きくなつて、父の仇を討つつもりである一家の人々を鏖殺おうさつせんとした。彼は亡き父の為に他人を殺したつもりでいた。ところが実はそうでない。
殺人鬼 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
自分に有理有利な口実があって、そして必勝鏖殺おうさつが期せるので無ければ、氏郷に対して公然と手を出すのは、勝っても負けても吾身わがみの破滅であるから為すすべは無かった。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
熱誠のあまり時としては鏖殺おうさつを事とするに至った。国民兵の某隊は、その私権をもって軍法会議を作り、わずか五分間のうちにひとりの捕虜の暴徒を裁断して死刑に処した。
それが、雪解け頃になると雪代水と共に流れだし、下流の魚類を鏖殺おうさつするという話である。
魔味洗心 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
そうじゃ、奸者共も、薄々と、吾等の企てを存じておる上は、何をしでかすか計られんから、手筈通りに、豊後の邸は、大砲にて、打っ払い、将曹の邸は、取巻いて、鏖殺おうさつしてくれよう。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
心ある人々これを憂い、饅頭の中に回章を秘めて同志の間に配布し、八月十五日の夜志士ら蹶起けっきして喇嘛僧を鏖殺おうさつし、僅かに生き残った者は辛うじて蒙古に逃れ、支那には全く跡を絶った。
徒党を組んだ失敗者は時に一緒に十五、六人鏖殺おうさつされたこともある。
監獄部屋 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
最も鏖殺おうさつ甲斐がいのあるものでございますが、いままでなんともないところをみると、或いは遂になんでもないかもしれないのでありまするが、或いは又
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
というわけで、なるべく周囲の天地を驚かさないようにして、なるべく最少の動揺を以て彼等鏖殺おうさつの秘計を胸に秘めつつ、事もなげに伊東へ使をやって
后まずふところより兎を出しその動作を見て必勝とうらない定め臣下皆そのつもりで勇み立ちてたちまちローマ方七万人を鏖殺おうさつしたがついに兵敗れて後は自ら毒を仰いで死んだ。
使者鏖殺おうさつの変が、鎌倉へ知れるまでには、なお数日のまがありましょう。よしまた、ご謀反むほんおおやけになったところで、ここには精鋭四千騎が、殿を上にいただいて、火の玉の意気を
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
松山四ヶ処の城々より一揆いっき勢は繰出し、政宗と策応して氏郷勢を鏖殺おうさつし、氏郷武略つたなくて一揆の手にたおれたとすれば、木村父子は元来論ずるにも足らず、其後一揆共を剛、柔、水
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
鏖殺おうさつしてやる。……俺らは戦争に慣れている。死ぬことなどは恐れない。俺らは生活そのものが、いつも流血の戦争なのだ! それに反してお前達は、享楽主義で命が惜しく、戦争を
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
まかりちがえばローゼンの一家を鏖殺おうさつしてもかまわないから、むすめはどうしても己のものにしなくてはならんと思いだした。と、嫉妬しっとの強い背の高い肩幅の広い細君さいくんの顔が見えて来る。
警察署長 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
甲斐の武田信玄は徳川方の細作さいさくを掃蕩するために領内の盲人八百人を鏖殺おうさつしたと云う伝説があり、続々群書類従第十教育部所載北条幻庵覚書には、女中が盲人を近づけることの危険を説いて
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「では、将曹、平、仲の徒を鏖殺おうさつするか」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
さて二、三人の声して縛り殺せというた。さてこそ疑いなし、此方こなたより斬って掛かれと抜剣して進み入り、男女八人を鏖殺おうさつして台所の傍を見れば生きた豕をつなぎいた。
葡萄酒ぶどうしゅや、麦酒の空壜あきびんを海に捨てれば、毒物を流して日本人を鏖殺おうさつするの計画と怖れ、釣床に疲れている水兵を見て異人は惨酷だ、悪事を為したものには相違なかろうが
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「希代の科学者鏖殺おうさつ犯人つい捕縛ほばくせられる。犯人は我国毒瓦斯ガス学の権威椋島才一郎」
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「うん、五万両か、安いものだ。一家鏖殺おうさつされるより器用に五万両出すことだな」
郷介法師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
つい若気の兄弟が、金持の一家を鏖殺おうさつするという大事件をおこしてしまった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鏖殺おうさつさるべき運命を享受する位置に立つのである。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一挙に攻めて鏖殺おうさつしたい、と云う意見でございましたよ。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
敵の軍馬を鏖殺おうさつすべき薬科を見出すかも知れぬ。