みぐる)” の例文
『その御一周忌に御参拝ありながら、まだ、山科へお帰りもないうちに、この遊興沙汰は何事でござりますか。余りにも、みぐるしい』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みぐるしい粗末なものであるが、大切そうに取り上げて、ご馳走の向こう側へそっと坐らせた。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
はたしてこころ平静へいせいたもてるであろうか、はたしてむかしの、あのみぐるしい愚痴ぐちやら未練みれんやらがこうべもたげぬであろうか……かんがえてても自分じぶんながらあぶなッかしくかんじられてならないのでした。
天なる神様、私はこんなみぐるしい世界をよもやあなたが私にお示しにならうとは思ひませんでした。私はこの醜を見せつけられて殆ど失明しさうです。たゞ私は私を信頼して居ります。
慚愧ざんきすると、その慚愧している自分のすがたがまた、いとどみぐるしく思われて、武蔵はよけいに自分への恥に打たれた。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「やがて、信長が来て、検分のとき、みぐるしくも、取り乱したるものかな——などといわれては恥辱ちじょくぞ」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『どこへお出で召さるか。その為に、吾々どもがついて居ります。相手方が、あのように静かにて居られるのに、みぐるしいではござらぬか。ちと、恥をお知りなさい』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
故右府様御他界このかた、半年もぬまに、遺臣のやからが、はや相剋内紛そうこくないふんしておると聞えては、世上にみぐるしい。かつは、上杉、北条、毛利などのうかが間隙かんげきともなりはしまいか。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
井伊直弼のやうな人も、四十五で宰相になつて、おそろしく剛毅果斷の一點張りにみえるが、あの信念的な足もとにも、つぶさに見ると、やはりみぐるしい程な迷ひが絡んでゐる。
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
「止し給えッ、城兵の見ている前でみぐるしいッ。今さら、足蹴にしたところで及ばぬことだ」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「悪人とは申せ、そちも一藩の国老ではないか。……卑怯はすな。みぐるしいまねはすな」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平常の臙脂えんじや黒髪のうるわしさも、もしこの日にしてその芳香を心から発するのでなければ、ただみぐるしさをかくす似而非えせのものと、女と女のあいだですらさげすみ、いやしむ気風があった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「過日は、せっかくお訪ね下された由ですが、不在の折で、残念なことをしました。——なお、そのせつは門下の阿巌あごんが、みぐるしいていをお目にかけ、彼の師として胤舜も恥じ入っております」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其許そこもともまた、長政どのに会いに参ったのではないと仰せあったゆえ、お通し申したのじゃ。ここへ来ておことばをたがえるなど、使者としてみぐるしい弄策ろうさく。かまえてお会わせいたすことはできぬ
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうです。今の御心境のままを日常に持っては。——朝倉家に身を置くはいいが、わずかな禄米ろくまいや小功を争って、みぐるしい内争にわざわいされているよりは、こうして悠々と、生涯をさおさしては」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
間諜かんちょうッ。敵の間諜。——もう逃げられはせんぞ。みぐるしいざまは止せ」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大切な尊客の前において、不用意なる能をお目にかけなどしたは、みぐるしき曲事くせごとたるばかりでなく、芸者げいしゃとして、平常の心がけの不つつかによる。芸道の鍛錬たんれんも、武家の兵法も、変りあるべきでない。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「たれぞ、あのみぐるしいものを、射落せ」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みぐるしいッ! 坐れッ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みぐるしいっ」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)