おく)” の例文
また或日海鰱ぶり一尾を携え来って、抽斎におくり、帰途に再びわんことを約して去った。五百はために酒饌しゅぜんを設けようとしてすこぶる苦心した。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
あけの日二八八大倭やまとさとにいきて、翁が二八九めぐみかへし、かつ二九〇美濃絹みのぎぬ三疋みむら二九一筑紫綿つくしわた二屯ふたつみおくり来り、なほ此の妖災もののけ二九二身禊みそぎし給へとつつしみて願ふ。
秦王しんわうもつしかりとし、(一一八)くだしてをさめしむ。李斯りしひとをして(一一九)くすりおくらしめ、自殺じさつせしむ。韓非かんぴみづか(一二〇)ちんぜんとほつすれどもまみゆるをざりき。
古ギリシアのゼウス神幼時乳育されたアマルティアてふ山羊の角を折ってメリッセウスの娘どもにおくり、望みの品は何でもその角中に満つべき力をけた(スミス『希臘羅馬人伝神誌名彙ジクショナリ・オヴ・グリーク・エンド・ローマン・バヨグラフィ・エンド・ミソロジー』巻一)
と云う詩をおくった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
暫くして忠之は、家老の家には什寶じふはうがなくてはならぬと云つて、家康が關が原の役に父長政に與へた具足を十太夫におくつた。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
役者はおもいおもいの意匠をこらしたびらを寄せた。縁故のある華族の諸家しょけは皆金品をおくって、中には老女をつかわしたものもあった。勝久が三十一歳の時の事である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
香以はこの屏風を横奪して、交山には竹川町点心堂のあんに、銀二十五両を切餅きりもちとして添えておくった。当時二十五両包を切餅と称したからである。交山は下戸であった。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
翌朝闔家かふかのものが一斉に起き出で、諸弟子のおくる所の玩具を観て笑ひ興じた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
院之荘のすだれの事は興ある逸話である。狩谷棭斎は茶山に十符とふ菅薦すがごもを贈つた。茶山は其むくいに院之荘の簾をおくることを約した。それを遷延して果さなかつたのに、今やう/\求め得て送つたのである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)