転覆てんぷく)” の例文
旧字:轉覆
それで、みんなは、汽車きしゃ転覆てんぷく原因げんいんが、ひとをひきころそうとしたため、いそいで汽車きしゃめたのにあったことをりました。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もしその華やぎ切った不安の極限に達した刹那ならたとえ自動車が転覆てんぷくして、身も心も消え失すにしろ、幸いに今生において充たされたわたくしの気分は
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そして平家の一門がますます栄えるにつれて、彼の怨恨えんこんはいよいよつのるばかりだった。彼はいかにして平家を転覆てんぷくしてうらみを復讐ふくしゅうすべきかをばかり考えるらしかった。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
が、速度のついた列車が、機関車のブレーキ一つでさされないとすると、脱線だっせん転覆てんぷく……か。わずか二、三りょうではあるが、混合列車こんごうれっしゃのことなので客車も連結れんけつされている。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
アニリン染料の真青な液が一ぱい大樽おおだるに入っているのを積んだトラックがハンドルを道悪に取られ、呀っという間に太い電柱にぶつかって電柱は折れ、トラックは転覆てんぷく
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その美しい波の上から、坊やの好きな自動車に乗って、二十里の山道をブウブウブウブウと飛ばして来ました。五度も六度もパンクしました。それでも転覆てんぷくはしませんでした。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
ワーテルローをしてアウステルリッツ戦勝の結末たらしむるためには、天は少しの降雨を要したのみであって、空を横ぎる時ならぬ一片の雲は、世界を転覆てんぷくさせるに十分であった。
その意味で、私は、彼の自己嫌悪が自己嫌悪に終らず、その失われた心の平衡が、彼自身を転覆てんぷくさせるほど甚しいものでなかったことを、むしろ彼のために祝福してやりたいとさえ思うのである。
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
おりよく、それが貨車かしゃであったからたいした負傷者ふしょうしゃはなかったけれど、貨車かしゃ幾台いくだいとなくこわれて、なかまったり、堤防ていぼううえ転覆てんぷくしたりして、たいへんなさわぎになりました。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その間を押しわけて前に出てみると、ホテルの建物はひどくかたむき、今にも転覆てんぷくしそうに見えていた。その前に、蟹寺博士が、まるで生き残りの勇士ゆうしのように只一人、凛然りんぜんとつっ立っていた。
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
このいたろうそくをやまうえのおみやにあげて、そのえさしをにつけて、うみると、どんな大暴風雨だいぼうふううでも、けっして、ふね転覆てんぷくしたり、おぼれてぬような災難さいなんがないということが
赤いろうそくと人魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)