トップ
>
跣
>
はだし
ふりがな文庫
“
跣
(
はだし
)” の例文
「涌谷をなだめなければならない」甲斐は
仰臥
(
ぎょうが
)
したままそう
呟
(
つぶや
)
いた、「涌谷の考えは白刃の上を
跣
(
はだし
)
で渡るようなものだ」
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
白い衣とそして
跣
(
はだし
)
であった。宇治を見おろすと鋭い声で何か叫んだ。憎しみにあふれた叫びであった。そしてよろよろと小屋を離れ、宇治の方に近づいた。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
「こんな遅くまで帰らないことはないのに、どうしたかと思って、捜していた所だった。おや、
跣
(
はだし
)
で? ……」
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
真紅
(
まっか
)
な足袋
跣
(
はだし
)
のまま離れ座敷を出ると、植込みの間に腰を抜かしている若党勇八を尻目に見ながら、やはり足袋跣のまま、悠々と玄関脇の仏間へ上って来て
名君忠之
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
だが、僕の靴底を奇妙に冷たいものが流れる。どうにもならぬ冷たいものが……。あの女も恐らく炎々と燃える焔に
頬
(
ほお
)
を射られ、
跣
(
はだし
)
で地べたを走り廻ったのか。
火の唇
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
▼ もっと見る
私は毎朝はやく起されて草ぼうぼうとしたあき地を
跣
(
はだし
)
で歩かされる。ぺんぺん草や、蚊帳つり草や、そこにはえてる草の名をおぼえるだけでも大変な仕事である。
銀の匙
(新字旧仮名)
/
中勘助
(著)
もさゝず
濡萎
(
ぬれしよぼ
)
たれて
跣
(
はだし
)
とは其の意を得ずと思ひしに跡にて
聞
(
きけ
)
ば
弟
(
おとうと
)
なる十兵衞とやら云者が札の辻にて人手にかゝり其
曉
(
あかつ
)
きに長庵は病氣なりとて十兵衞が出立するを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
着飾つた坊さん、
跣
(
はだし
)
の
位牌
(
いはい
)
持ち、
柩
(
ひつぎ
)
、——生々しい赤い杉板で造つた四斗
樽
(
だる
)
ほどの
棺桶
(
くわんをけ
)
で、頭から白木綿で巻かれ、その上に、小さな印ばかりの
天蓋
(
てんがい
)
が置かれてある。
野の哄笑
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
大阪でチボ(スリ)と
云
(
い
)
えば、理非を
分
(
わか
)
たず打殺して川に
投
(
ほう
)
り込む
習
(
なら
)
わしだから、私は本当に怖かった。何でも
逃
(
に
)
げるに
若
(
し
)
かずと覚悟をして、
跣
(
はだし
)
になって堂島の方に逃げた。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
跣
(
はだし
)
になつて逃げ出すもの、父母を呼んで泣き出すもの、蒼ざめて立ちすくんだもの——と一瞬の間に運動場全体が、大きな網にかゝつた魚群のやうな必死の絶叫に燃え立つた。
サクラの花びら
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
丸刈りの日にやけた
跣
(
はだし
)
の少年たちが、蟻のようにたかり拾いはじめた。
その一年
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
と、片言の
独逸
(
ドイツ
)
語で呼ぶ。するとローゼマリーが現れて、垣根を躍り越えて此方の庭へ来、
跣
(
はだし
)
になって芝生の上で
縄跳
(
なわと
)
びをする。それにフリッツや、幸子や妙子なども加わることがある。悦子は
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
流石にその日龍然は、息の乱れを収めてもとの顔付にもどるまで十数歩の歩行を要したが、それも収まると、また超然とした残骸に還元して、一方の足は
跣
(
はだし
)
にしたまま長い坂道を傾きながら歩いた。
黒谷村
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
下女心配で
堪
(
たま
)
らず、その
昏
(
くれ
)
に
跣
(
はだし
)
で逃げ帰り、その父兄
愕
(
おどろ
)
いて
暇
(
いとま
)
を乞いに来たので馬琴不思議に思い、色々聞き
糺
(
ただ
)
すと右次第、全く小説の妙趣向が浮かんだ欣喜の余りに出た独り言にほかならずと分り
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
あのものぐさが
跣
(
はだし
)
で庭の草取りはする
荘子
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
翌日、私は甥を連れて雨の中を八幡村へ帰って行った。私についてとぼとぼ歩いて行く甥は
跣
(
はだし
)
であった。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
納屋
(
なや
)
の土床で子供が遊んでいたり、
跣
(
はだし
)
の農婦とすれ違ったりする。ふと振り返ると、農婦が足をとめて、じっとこちらを見詰めている。道はだんだん上り坂になる。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
外から、人々がこう
喚
(
わめ
)
くと、一室からは、お杉だの分家の嫁だのが、
跣
(
はだし
)
のまま裏庭へころげ降りた。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「そなたが、そうして見せると、一そう伊吹の頃の小娘がこの眼に
甦
(
よみが
)
えされてくる。おれを嫌って、そなた、伊吹ノ城から
跣
(
はだし
)
で田楽村へ泣いて帰ったことなどあったな」
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
五郎は返事に
窮
(
きゅう
)
して黙っていた。すると女は
跣
(
はだし
)
のまま簀子の上にあがって来た。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
わたしはハッと逃げ出したくなった。わたしは
跣
(
はだし
)
で歩き廻った。ぞろぞろ動くものに押されて、ザワザワ揺れるものに揺られて、影のようなものばかりが動いているなかをひとりふらふら歩き廻った。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
跣
漢検1級
部首:⾜
13画
“跣”を含む語句
跣足
素跣足
徒跣
足袋跣
足袋跣足
素跣
玄人跣足
跣跋
破衣素跣足
素人跣足
片跣足
文殊跣足
裸跣
裸頭跣足
徒跣足
徒歩跣
跣坐
同門跣足
跣足乞食
跣足参
...