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諧調
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かいちょう
ふりがな文庫
“
諧調
(
かいちょう
)” の例文
すべてそれらの物音を、太田は飽くことなく楽しんだ。雑然たるそれらの物音もここではある一つの
諧調
(
かいちょう
)
をなして流れて来るのである。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
真に読むことを知ってる者は、ジャン・クリストフと歓喜せる魂との間の、職分や技術や調和や
諧調
(
かいちょう
)
の本質的な差異を見てとるだろう。
ジャン・クリストフ:13 後記
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
、
ロマン・ロラン
(著)
幸福というものは、魂の
香
(
かお
)
りであり、歌う心の
諧調
(
かいちょう
)
である。そして魂の音楽のうちのもっとも美しいものは、温情にほかならない。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
平生はただ美しいとばかりで不注意に見過ごしている秋の森の複雑な色の
諧調
(
かいちょう
)
は全く
臆病
(
おくびょう
)
な
素人
(
しろうと
)
絵かきを途方にくれさせる。
写生紀行
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
店で買物をしている人たちも、往来で立話をしている人たちも、皆が行儀よく、
諧調
(
かいちょう
)
のとれた低い静かな声で話をしていた。
猫町:散文詩風な小説
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
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単に
尨大
(
ぼうだい
)
な治乱興亡を記述した戦記軍談の
類
(
たぐい
)
でない所に、東洋人の血を大きく
搏
(
う
)
つ一種の
諧調
(
かいちょう
)
と音楽と色彩とがある。
三国志:01 序
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それと一つには、三人の姉妹が同じ屋根の下に集ると云うことが、それだけで家の中に春風を生ぜしめるので、この三人の中の誰が欠けても
諧調
(
かいちょう
)
が失われるのであろう。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
右へ左へとその飛沫の線を延ばしながら歓声をあげて水面を叩き、揺れあい押しあいつつ眩しいほど雪白の泡となって汀を掩う……これらはすべて或る
諧調
(
かいちょう
)
をもっていた。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
かつてその
諧調
(
かいちょう
)
に
噪音
(
そうおん
)
があった場合がなく、また強弱に失した場合もない。色調はいつも深くまた静かである。これに材料の柔かさとその心地よき厚みとが一層の温味を加える。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
すると、この広間の声々は海鳴りの音に似て来る。意味の取れなくなった音響でありながら、それは一脈の
諧調
(
かいちょう
)
をもっていた。さッと
遠退
(
とおの
)
いて行って、時をおいて間もなくどッとこちらに押し寄せた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
声とその
諧調
(
かいちょう
)
の美とを賞したのだという。
蝉の美と造型
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
管絃楽は沈黙してしまって、
眩暈
(
めまい
)
を起こさせるほどの
諧調
(
かいちょう
)
の上に彼を取り残した。その諧調の
謎
(
なぞ
)
は解けていなかった。彼の頭脳はなお強情に繰り返した。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
ゴトン……ゴトン……と
諧調
(
かいちょう
)
をもって廻る水車の音に、先の話し声が消されがちでしたが、その代り彼が忍んだことも、鋭敏な彼等に気づかれていない。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ジャン・クリストフ」十巻がいかに音楽的
諧調
(
かいちょう
)
に満たされているかは、次の告白によっても明らかである。
ジャン・クリストフ:01 序
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
これに反して、同じ北斎が自分の得意の領分へはいると同じぎざぎざした線がそこではおのずからな
諧調
(
かいちょう
)
を奏してトレモロの響きをきくような感じを与えている。
浮世絵の曲線
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そして子供の思想の中にはいり込み、その夢の中に
沁
(
し
)
み込み、
澱
(
よど
)
みなき
諧調
(
かいちょう
)
のマントで彼をくるんでやる。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
小広い平地があって、
竹林
(
ちくりん
)
のしげった
隅
(
すみ
)
に、一
軒
(
けん
)
の
茅葺屋根
(
かやぶきやね
)
がみえ、
裏手
(
うらて
)
をながるる水勢のしぶきのうちに、ゴットン、ゴットン……
水車
(
みずぐるま
)
の
悠長
(
ゆうちょう
)
な
諧調
(
かいちょう
)
がきこえる。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私はそれよりもむしろ、ジャン・クリストフの最後に、「愛と憎との
厳
(
おごそ
)
かな結合たる
諧調
(
かいちょう
)
(一一)
」
ジャン・クリストフ:13 後記
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
、
ロマン・ロラン
(著)
線の並列交錯に現われる節奏や
諧調
(
かいちょう
)
にどれだけの美的要素を含んでいるかという事になると、問題がよほど抽象的なものになり、むしろ帰納的な色彩を帯びては来るが
浮世絵の曲線
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
からみ合った昼と夜との
微笑
(
ほほえ
)
み。愛と憎悪との
厳
(
おごそ
)
かな結合、その
諧調
(
かいちょう
)
。二つの強き翼をもてる神を、われは歌うであろう。生を
讃
(
たた
)
えんかな! 死を讃えんかな!
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
雑音もなく
埃
(
ほこり
)
も立たない大通りを、揺られながらウットリともたれて、ズンズン流れてゆく地の上を細目に見ていると、駕屋の足音も一種の
諧調
(
かいちょう
)
をもって気持よく聞こえる。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
刑務所や工場を題材にしているにかかわらず、全体に明るい朗らかな
諧調
(
かいちょう
)
が一貫している。
映画雑感(Ⅰ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
呑噬
(
どんぜい
)
の
獅子
(
しし
)
である。ひしひしと寄せてくる虚無を打倒している。そして戦いの
律動
(
リズム
)
こそ最上の
諧調
(
かいちょう
)
である。この諧調は命数に限りある汝の耳には聞き取れない。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「百万両」にはなんとなく
諧調
(
かいちょう
)
の統整といったようなものが足りなくて、違った畑のものが交じっているような気がしたが、今度のはそういう不満はあまり感じさせられない。
映画雑感(Ⅰ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
鬼
(
き
)
一
管
(
かん
)
とか
天彦
(
あまひこ
)
とかいう
名笛
(
めいてき
)
の
音
(
ね
)
のようだ。なんともいえない
諧調
(
かいちょう
)
と
余韻
(
よいん
)
がある。ことに、笛の音は、
霧
(
きり
)
のない
月明
(
げつめい
)
の夜ほど
音
(
ね
)
がとおるものだ。ちょうど今夜もそんな
晩
(
ばん
)
——。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
音響的形体におけるごとく視覚的形体における
諧調
(
かいちょう
)
を支配する、同じ法則や、または、生命の両反対の斜面をそそぐ色と音との両河が流れ出る、魂の深い水脈などを。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
水車の
諧調
(
かいちょう
)
に、あたりはいつか、たそがれてきた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
音楽家は音楽ばかりで養われてるものではない。人間の言葉の抑揚、身振りの
律動
(
リズム
)
、微笑の
諧調
(
かいちょう
)
、などはみな音楽家に、仲間の者の
交響曲
(
シンフォニー
)
以上の音楽を暗示するのである。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
愛する女に取り巻かれてる心地がして、限りないうれしさが胸いっぱいになった。眼を閉じて霊妙な曲をひきだした。そのとき彼女は、
神々
(
こうごう
)
しい
諧調
(
かいちょう
)
に包まれてるその室の美を悟った。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
紫色の
靄
(
もや
)
に浸ってる大木、灰色の像や柱頭、幾世紀もの光を吸収した王政時代の塔碑の
苔生
(
こけむ
)
した石、それらの上に
射
(
さ
)
している光線の
諧調
(
かいちょう
)
を——細やかな日光と乳白色の水蒸気とでできてる
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
おう、平和、崇高な
諧調
(
かいちょう
)
、解放された魂の音楽!
汝
(
なんじ
)
のうちには、悲しみも喜びも死も生も、敵同志の民族も味方同志の民族も、みないっしょに
融
(
と
)
け合っている。私は汝を愛する、汝を求める、汝を
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
静寂の詩が、
砂漠
(
さばく
)
の
諧調
(
かいちょう
)
が、その顔には感ぜられた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
諧
常用漢字
中学
部首:⾔
16画
調
常用漢字
小3
部首:⾔
15画
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