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一八三七年頃からけはじめた尨大ぼうだいな量にのぼる彼の日記はその素材であり習作でもあった。詩作も試みたが、この方は大成しなかった。
一八三七年頃からけはじめた尨大ぼうだいな量にのぼる彼の日記はその素材であり習作でもあった。詩作も試みたが、この方は大成しなかった。
修善寺しゅぜんじにいる間は仰向あおむけに寝たままよく俳句を作っては、それを日記の中にんだ。時々は面倒な平仄ひょうそくを合わして漢詩さえ作って見た。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
随分長いのねえ、まだ今日から三十何日もあるわ! わたくし今日から一枚一枚、カレンダーにけとくわ! とジーナがさびしそうにいうのです。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
「悪いと思うからこそ下手に出てるんじゃないか。間抜奴まぬけめ」と柄にもなくタンカを切って、去り行く青バスの尻番号ナンバアを忘れないように手帳にけた。
青バスの女 (新字新仮名) / 辰野九紫(著)
読み役の捨吉は自分でけた帳面をひろげて、競うような算盤の珠の音を聞きながら、その日の分を読み始めた。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
見ると松谷秀子と虎井夫人との名が余の直ぐ前へいて居る、即ち二人は余等より一日先に此の宿へ来た者だ、此の宿ではタッた二晩しか泊らなんだのだ
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
キャラコの肌着はだぎにはちやうど適當な品です。針も糸に合つたのをりました。縫針ぬひばりの方は、おぼえをけておくのを忘れたと、あなたからスミス先生に云つて下さらんか。
蒸立だとか、好い色だとか云って、喜んでよ、こっちからも、にんべんの切手の五十銭ぐらい祝ったろう。小遣帳にいているだろう。そのおんなの行先が知れない奴があるものか。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「これから俺の人名簿へ、新しくけようっていう友人なのさ」
銀三十枚 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
けておるであろうな」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
まだ起きて帳面でもけていたのであろうか? 妙に皺の多い瘠せた顔の奥から、金壺眼かなつぼまなこを眼鏡越しに光らせている姿……鉤裂かぎざきだらけの上衣を着けて
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
道中記をけるもものうし、る時帳場で声を懸けたのも、座敷へ案内をしたのも、浴衣を持って来たのも、お背中を流しましょうと言ったのも、皆手隙てすきと見えて、一人々々入交いれかわったが、根津
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
甲野さんは寝ながら日記をけだした。横綴よことじの茶の表布クロースの少しは汗にごれたかどを、折るようにあけて、二三枚めくると、一ページさんいちほど白い所が出て来た。甲野さんはここから書き始める。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
で、こんな場所は、何の見物にも、つい足踏あしぶみをした事の無いのが多い。が、その人たちも、誰も会場が吉原というのをいとわず、中にはかえって土地に興味おもしろみを持って、到着帳にいたのもある。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
病気になった最初はじめっから、なぜですか、もうちゃんと覚悟をして、清川を出て寮へ引移るのにも、手廻りのものを、きちんと片附けて、この春からけるようにしたっちゃ、威張っていた、小遣帳こづかいちょう
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)