-
トップ
>
-
腦
>
-
なや
正太は
恐る/\
枕もとへ
寄つて、
美登利さん
何うしたの
病氣なのか
心持が
惡いのか
全體何うしたの、と
左のみは
摺寄らず
膝に
手を
置いて
心ばかりを
腦ますに
君ゆゑこそ
可惜青年一人、
此處にかく
淺ましき
躰たらくと、
窓の
小笹を
吹く
風そよとも
告げねば、
知らぬ
令孃は
大方部屋に
籠りて、
琴の
音などにいよいよ
心を
腦まさせけるが
我れと
我が
身に
持て
腦みて
奧さま
不覺に
打まどひぬ、
此明くれの
空の
色は、
晴れたる
時も
曇れる
如く、
日の
色身にしみて
怪しき
思ひあり、
時雨ふる
夜の
風の
音は
人來て
扉をたゝくに
似て