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肝癪
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かんしゃく
ふりがな文庫
“
肝癪
(
かんしゃく
)” の例文
天麩羅蕎麦もうちへ帰って、一晩寝たらそんなに
肝癪
(
かんしゃく
)
に障らなくなった。学校へ出てみると、生徒も出ている。何だか訳が分らない。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
今我が枕頭に座って居ったとすれば我はこれに
酬
(
むく
)
いるに「馬鹿野郎」という
肝癪
(
かんしゃく
)
の一言を以てその座を
逐払
(
おいはら
)
うに止まるであろう。
病牀苦語
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
トいいながら
徐
(
しず
)
かに
此方
(
こなた
)
を振向いたお政の顔を見れば、何時しか額に
芋蠋
(
いもむし
)
ほどの青筋を張らせ、
肝癪
(
かんしゃく
)
の
眥
(
まなじり
)
を釣上げて
唇
(
くちびる
)
をヒン曲げている。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
青筋出して
肝癪
(
かんしゃく
)
起した二葉亭の
面貌
(
めんぼう
)
が文面及び筆勢にありあり彷彿して、当時の二葉亭のイライラした極度の興奮が想像された。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
幾らか気色を直し
肝癪
(
かんしゃく
)
を
和
(
やわら
)
ぐる
媒
(
なかだち
)
となり、失せた血色の目の
縁
(
ふち
)
に
上
(
のぼ
)
る頃、お万が客は口軽く、未練がないとはさすがは兼吉つあんだ、好く言つた
そめちがへ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
客の
詞
(
ことば
)
には押え切れない
肝癪
(
かんしゃく
)
の響がある。「どうしたのだね。妙じゃないか。ジネストの奥さんに、わたしが来て待っているとそう云ったかね。ええ。」
田舎
(新字新仮名)
/
マルセル・プレヴォー
(著)
肝癪
(
かんしゃく
)
を起させる程泣きもしず、意地汚く乳もねだらず、その健康から云っても、おぼろげながら見える品性から云っても、私は、実に理想的な児だと信じて居る。
暁光
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
果ては
肝癪
(
かんしゃく
)
を起して、井の底を引掻き廻すと、折角の清水を濁らすばかりで、
肝腎
(
かんじん
)
の柄杓は一向上らぬ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
王は聞えた怒り性だったが、かく言われても
肝癪
(
かんしゃく
)
を起さず。それほどまでも厚くアを重んじた。
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
ああよくでかした感心なと云われて見たいと面白がって、いつになく
職業
(
しょうばい
)
に気のはずみを打って居らるるに、もしこの仕事を
他
(
ひと
)
に
奪
(
と
)
られたらどのように腹を立てらるるか
肝癪
(
かんしゃく
)
を起さるるか知れず
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
堪え忍んだ
肝癪
(
かんしゃく
)
を破裂させた、顔を蒼くして
唸
(
うめ
)
くようにいった。
誘拐者
(新字新仮名)
/
山下利三郎
(著)
進めるだけ進めと度胸を
据
(
す
)
えて、のそのそ歩き出す。烏は知らん顔をして何か御互に話をしている様子だ。いよいよ
肝癪
(
かんしゃく
)
に
障
(
さわ
)
る。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
これは経験のない人に話したところがわからん事であるからいうにも及ばぬが、しかし時々この誤解をしられるために甚だ
肝癪
(
かんしゃく
)
に
障
(
さわ
)
ることがある。
病牀苦語
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
が、二葉亭のこの我儘な気難かし屋は世間普通の手前勝手や
肝癪
(
かんしゃく
)
から来るのではなくて、反覆熟慮して考え抜いた結果の我儘であり気難かし屋であったのだ。
二葉亭追録
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
勝手にしなと
肝癪
(
かんしゃく
)
を起こせば、勝手にしなくッてと
口答
(
くちごたえ
)
をする。どうにも、こうにも、なッた奴じゃない!
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
恥かしいが
肝癪
(
かんしゃく
)
も起し
業
(
ごう
)
も
沸
(
にや
)
し汝の頭を
打砕
(
ぶっか
)
いてやりたいほどにまでも思うたが、しかし
幸福
(
しあわせ
)
に源太の頭が悪玉にばかりは乗っ取られず、清吉めが家へ来て酔った揚句に云いちらした無茶苦茶を
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
おれはそんな事には構っていられない。坊っちゃんは竹を割ったような気性だが、ただ
肝癪
(
かんしゃく
)
が強過ぎてそれが心配になる。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
大杉は直情径行でスパイの勤まる
柄
(
がら
)
ではない。もしその
一本気
(
いっぽんぎ
)
な
肝癪
(
かんしゃく
)
や
傍若無人
(
ぼうじゃくぶじん
)
な
傲岸
(
ごうがん
)
が世間や同志を欺くの仮面であるなら、それは芝居が余り巧み過ぎる。
最後の大杉
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
一つ二つ芝居の話をしていると、下のボンボン時計が
肝癪
(
かんしゃく
)
を起したようにジリジリボンという。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
彼の神経はこの
肝癪
(
かんしゃく
)
を乗り超えた人に向って鋭どい懐しみを感じた。彼は群衆のうちにあって
直
(
すぐ
)
そういう人を物色する事の出来る眼を有っていた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それに奥坐舗では
想像
(
おもいやり
)
のない者共が
打揃
(
うちそろ
)
ッて、
噺
(
はな
)
すやら、笑うやら……
肝癪
(
かんしゃく
)
紛れにお勢は色鉛筆を執ッて、まだ真新しなすういんとんの文典の表紙をごしごし
擦
(
こす
)
り初めた。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
健三の心は
紙屑
(
かみくず
)
を丸めたようにくしゃくしゃした。時によると
肝癪
(
かんしゃく
)
の電流を何かの機会に応じて
外
(
ほか
)
へ
洩
(
も
)
らさなければ苦しくって
居堪
(
いたた
)
まれなくなった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は
大
(
おおい
)
に
肝癪
(
かんしゃく
)
に
障
(
さわ
)
った様子で、
寒竹
(
かんちく
)
をそいだような耳をしきりとぴく付かせてあららかに立ち去った。吾輩が車屋の黒と
知己
(
ちき
)
になったのはこれからである。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
変であって見ればどうかしなければならん。どうするったって仕方がない、やはり医者の薬でも飲んで
肝癪
(
かんしゃく
)
の
源
(
みなもと
)
に
賄賂
(
わいろ
)
でも使って
慰撫
(
いぶ
)
するよりほかに道はない。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
また余りに
肝癪
(
かんしゃく
)
が強過ぎて、どうでも勝手にしろという気にならない以上、最後にその度数が自然の同情を妨げて、何でそう
己
(
おれ
)
を苦しめるのかという不平が高まらない以上
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
帰せないと箒を横にして行く手を
塞
(
ふさ
)
いだ。おれはさっきから
肝癪
(
かんしゃく
)
が起っているところだから、日清談判なら貴様はちゃんちゃんだろうと、いきなり
拳骨
(
げんこつ
)
で、野だの頭をぽかりと
喰
(
く
)
わしてやった。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
肝
常用漢字
中学
部首:⾁
7画
癪
漢検1級
部首:⽧
21画
“肝癪”で始まる語句
肝癪持
肝癪玉