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聞取
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きゝと
が、もの
音、
人聲さへ
定かには
聞取れず、たまに
駈る
自動車の
響も、
燃え
熾る
火の
音に
紛れつゝ、
日も
雲も
次第々々に
黄昏れた。
世馴れた人の
如才ない
挨拶としか
長吉には
聞取れなかつた。
然うかと
思ふと、
遠い
国から
鐘の
音が
響いて
来るか、とも
聞取られて、
何となく
其処等ががや/\し
出す……
雑多な
声を
袋に
入れて、
虚空から
沼の
上へ、
口を
弛めて
あの
坂の
上り
口の
所で、
上から
來た
男が、
上つて
行く
中年増の
媚かしいのと
行違つて、
上と
下へ五六
歩離れた
所で、
男が
聲を
掛けると、
其の
媚かしいのは
直ぐに
聞取つて、
嬌娜に
振返つた。