群集ぐんしゅう)” の例文
ただその周囲の処に人がドヤ/″\群集ぐんしゅうして居るだけである。れゆえ大きな声を出して蹴破けやぶって中へ飛込とびこみさえすれば誠に楽な話だ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
試合場しあいじょうのほうは、さきほどから、きわだってしずかになっていた。群集ぐんしゅうも鳴りをしずめて、つぎ展開てんかいを待ちかまえているのであろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも多くの人たちが群集ぐんしゅうし、雑沓ざっとうしている中から神の声は聞こえてきたのです。もちろんそれは一つの寓話ファブルでしかありません。しかしです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
昨日きのう行方不明ゆくえふめいになった、三にんのものの家族かぞくや、たくさんの群集ぐんしゅうが、五つのあかいそりが、捜索そうさくかけるのを見送みおくりました。
黒い人と赤いそり (新字新仮名) / 小川未明(著)
三四郎は群集ぐんしゅうを押し分けながら、三人を棄てて、美禰子のあとを追って行った。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
初めはいきた亀ノ子となど売りしが、いつか張子の亀を製し、首、手足を動かす物を棒につけ売りし由。総じて人出ひとで群集ぐんしゅうする所には皆玩具類を売る見世みせありて、何か思付おもいつきし物をうりしにや。
江戸の玩具 (新字旧仮名) / 淡島寒月(著)
それはだまり返った群集ぐんしゅうであった。さけび声を立てて、わたしたちを興奮こうふんさせてはならないと言つけられたので、かれらはだまっていたが、この顔つきはくちびるの代わりにものを言っていた。
それを見ている沢山たくさん群集ぐんしゅうの中にとうといアショウカ大王も立たれました。
手紙 二 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
群集ぐんしゅうはただ、こう口からもらしただけであった。正視せいしするにしのびないで、なかには、矢来やらいにつかまったままあおざめた者すらある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとるまにくるま運転うんてんまってしまいました。で、群集ぐんしゅうは、この無礼ぶれい自動車じどうしゃなんなくさえることができました。
眠い町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なだれを打ってげかけた群集ぐんしゅうも、このさまをみて、どうなることかと、こわいもの見たさの好奇心こうきしんに、遠くからアレヨアレヨとながめている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「よくかえってきた。もうみんなはんだものとおもっていた。おまえたちは、幸福こうふくしまにでもすくわれていたのか?」と、群集ぐんしゅうなかから、一人ひとりがいいました。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「そうだ。幸福こうふくしまながあいだんでいたかとくのだ。」と、群集ぐんしゅうなかから一人ひとりこたえました。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
あのは、もうこのいえわたしたちといっしょにいるのでない。どこかはなれたまちなか群集ぐんしゅうあしまれたり、もまれたりしているのだ。よく人生じんせいは、一すんさきはわからぬというが、このことであろう……。
火事 (新字新仮名) / 小川未明(著)