繁々しげ/\)” の例文
「御方便なものだな——その鑄掛屋も、あのに氣があつて御浪人のところへ繁々しげ/\通ふのだらう。聾に道話なんざ洒落しやれにもならねえ」
こんな人達と繁々しげ/\往来ゆききをすれば、兎角浮名うきなの立つ世間である。喜田博士は歴史家だけに、そんな事はよくわきまへてゐた。
其樣そん心算つもりではなかつたから、お大は繁々しげ/\かねへ呼出をかける。第一大切の米櫃こめびつなくして了つては、此先生活の道がないので、見かけによらぬ氣の小いお大は、氣が氣でない。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
そう繁々しげ/\と二川を訪問することは出来なかったが、二川には野村が唯一人といっていゝ友人だったので、既に父も母も失っている彼は淋しがって、電話や手紙でよく来訪を求めた。
もし好きなのだつたら、あんなに始終しじう微笑を浮かべて見せなくも、あんなに繁々しげ/\と視線を送らなくも、あんなに態度を氣取つたり、あんなに樣々な愛嬌をつくつたりしなくもいゝのだ。
このみて相應に打けるゆゑ折々をり/\は重四郎をの相手となせしを以て重四郎は猶も繁々しげ/\出入なし居しが偶然ふと娘お浪の容貌みめかたちうつくしきを見初みそめしより戀慕れんぼじやう止難やみがたく獨りむねこがせしがいつそ我が思ひのたけ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たゞ小六ころくだけ時々とき/″\はなしに出掛でかける樣子やうすであつたが、これとても、さう繁々しげ/\あしはこわけでもないらしかつた。それにかれかへつてて、叔母をばいへ消息せうそくほとんど御米およねかたらないのをつねとしてつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「へツ、大きな聲ぢや言へませんが、お二人は、繁々しげ/\逢引をして居るとしたらどんなもので——坊主と尼の夫婦びななんぞ御時世ぢやありませんよ」
「貴方にも困りますな。さう繁々しげ/\いでになつては。無論私は以前御厄介にもなつた事があるし、今は幾らか金銭かねの融通もつく身分ですから、出来るだけはお尽ししたいが……」
繁々しげ/\逢つて居ると聽いて、それから伊太郎の顏を見ると、八五郎でさへ、妙に無常を感じるといふ話でした。
「寅吉さんはお小夜のところへ繁々しげ/\通つて居たやうで、これは町内で知らない者はありません。尤もお小夜は何んと言つて居たか、そこまでは判りませんが」
「解らない。まるつ切り解らない。兎に角、染吉の繁々しげ/\出入りする家を探すことだ」
「その島五六郎樣は、繁々しげ/\とお隣りに來られるのか」
「一番繁々しげ/\通ふのは誰だい」