筆先ふでさき)” の例文
十露盤玉そろばんだま筆先ふでさき帳尻ちやうじりつくろふ溝鼠どぶねづみのみなりけん主家しゆか一大事いちだいじ今日こんにち申合まをしあはせたるやうに富士見ふじみ西行さいぎやうきめ見返みかへるものさへあらざれば無念むねんなみだ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのうちに、小犬こいぬたちは、だんだんえるようになりました。そして、よちよちと、みじかい、筆先ふでさきのようなをふりながらあるくようになりました。
森の中の犬ころ (新字新仮名) / 小川未明(著)
筆先ふでさき十露盤玉そろばんだまにてかすめ始めしが主人は巨萬きよまんの身代なれば少しの金にはも付ずわづかに二年の内に金子きんす六十兩餘をかすり今は熊本に長居ながゐやくなし近々に此土地を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
第一馬琴の書くものは、ほんの筆先ふでさき一点張りでげす。まるで腹には、何にもありやせん。あればまず寺子屋の師匠でも言いそうな、四書五経の講釈だけでげしょう。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
人物の描写は筆先ふでさきの仕事にあらず実地の観察と空想の力とありて初めてなさるるものなり。
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
まったく、大本教おおもときょうのお筆先ふでさきに引っかかったみてえで……それから亜米利加へ着くまで二週間ばかりの間、六の親父とあっしと二人で上甲板の病室に入れられてウンウン云っておりました。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
なげくべきことならずと嫣然につこみてしづかに取出とりいだ料紙りやうしすゞりすみすりながして筆先ふでさきあらためつ、がすふみれ/\がちて明日あす記念かたみ名殘なごり名筆めいひつ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
空海くうかい道風どうふう佐理さり行成こうぜい——私は彼等のいる所に、いつも人知れず行っていました。彼等が手本にしていたのは、皆支那人の墨蹟ぼくせきです。しかし彼等の筆先ふでさきからは、次第に新しい美が生れました。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)