ゑま)” の例文
彼等の物語をばゑましげに傍聴したりし横浜商人体しようにんていの乗客は、さいはひ無聊ぶりようを慰められしを謝すらんやうに、ねんごろ一揖いつゆうしてここに下車せり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
郎女が、筆を措いて、にこやかなゑまひを蹲踞するこの人々の背にかけ乍ら、のどかに併し、音もなく、山田の廬堂を立ち去つたのに、心づく者は一人もなかつたのである。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
玲々さや/\と聲あつて、神のゑまひの如く、天上を流れた。——朝風の動き初めたのである。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「念はぬに妹がゑまひを夢に見て」(巻四・七一八)等の例がある。「うれしみと」の「と」の使いざまは、「うれしみと紐の緒解きて」(巻九・一七五三)とある如く、「と云って」の意である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
うちそがひ妻を憎めば火と燃えてゑまひひたせまる大き眼おもほゆ
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
去りゆく女が最後にくれるゑまひのやうに
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
ゑまひ』のはなも、『なげかひ』の
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
千秋ちあきと思へども言はるゝ度にはづかしさの先立なれば果敢々々はか/″\しき回答いらへもなくておもはゆげかゝる所ろへ門の戸開け這入はひり來るは小西屋の一番管伴ばんたう忠兵衞なれば夫と見るより父親てゝおやいとゑまに迎へ上げ忠兵衞どのか能く來ませし今日等は定めし婚姻の日限にちげんきめにお出が有らうと今も今とて娘と二個ふたりうはさ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
※々さやさやと声あつて、神のゑまひの如く、天上を流れた。——朝風の動きめたのである。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「なでしこが花見る毎に処女らがゑまひのにほひ思ほゆるかも」(巻十八・四一一四)、「秋風になびく川びの柔草にこぐさのにこよかにしも思ほゆるかも」(巻二十・四三〇九)の如き歌をも作っている。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
額髪ぬかがみゑま女童めわらはこのごとくあどなきものを恋ふとありにし
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
睡蓮すいれんのかたゑまひ。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
ゑまひのにほひ」は青年の体にいた語でなかなかうまいところがある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
死にせりと母が書きし文見ればその子がゑまひ力なかりし
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
日を睡蓮のかたゑまひ。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
死にせりと母が書きし文見ればその子がゑまひ力なかりし
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)