うか)” の例文
ブル/\ふるえて居る新吉に構わず、細引ほそびきを取ってむこうの柱へ結び付け、惣右衞門の側へ来て寝息をうかがって、起るか起きぬかためしに小声で
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「お金がありゃア尚いいねえ。楽な生活くらしが出来るんだからねえ……ほんとにお前さんにあるかしら?」うかがうような調子である。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
敬太郎は宿の上り口の正面にかけてある時計を見るふりをして、二階の梯子段はしごだんの中途まで降りて下の様子をうかがった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分はぎょっとして起あがろうとしたが、直ぐ其処そこに近づいて来たのでそのまま身動きもせず様子をうかがっていた。人々は全たく此処ここに人あることを気がつかぬらしい。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
千恵はわざわざ二階へ降りるのに東側の階段を使つたりして、なるべく廊下の往き来を頻繁ひんぱんにして、再び姉さまの姿をよそながら見る機会を、ひそかにうかがつてゐました。
死児変相 (新字旧仮名) / 神西清(著)
さうだとすれば、昨日の晩も、一昨日の晩も、夜な/\此の二階の窓の近くへ忍び寄つて、入れて貰はうかどうしようかと躊躇ためらひながら、中の様子をうかがつてゐたのかも知れない。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
叫んだが、権叔父すら度を失って、武蔵の顔をうかがっているにとどまる。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仁右衛門は息気いきを殺して出て来る人々をうかがった。場主が帳場と一緒に、後から笠井にかさをさしかけさせて出て行った。労働で若年の肉をきたえたらしい頑丈がんじょうな場主の姿は、何所どこか人をはばからした。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
うかがへば折節本陣よりさぶらひ一人出來りぬればすゝみ寄て天一坊樣には明日は御逗留ごとうりうなるや又は御發駕ごはつがに相成やと問けるに彼の侍ひ答て天一坊樣には明日は當所たうしよに御逗留の積なりとぞ答へたりこれは伊賀亮が兼てのたくみにて若も酒井家より明日の出立しゆつたつ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
金田君は探偵さえ付けて主人の動静をうかがうくらいの程度の良心を有している男だから、吾輩が偶然君の談話を拝聴したっておこらるる気遣きづかいはあるまい。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ご貴殿森の向こう側へ行き、馬に乗って通る旅人の様子を、それとなくうかがってくださるよう」
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そのまま役所通ひをしながら形勢をうかがつてゐると、やがて華北交通から来ないかと言つて来た。最初の仕事は、北京ペキンの郊外あたりに鉄道病院みたいなものを作るのだといふ。
夜の鳥 (新字旧仮名) / 神西清(著)
さうだとすれば、昨日の晩も、一昨日の晩も、夜な/\此の二階の窓の近くへ忍び寄つて、入れて貰はうかどうしようかと躊躇ためらひながら、中の様子をうかがつてゐたのかも知れない。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
いよいよ来たな、こうなってはもう駄目だとあきらめて、ふすま柳行李やなぎごうりの間にしばしの間身を忍ばせて動静をうかがう。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうだとすれば、昨日の晩も、一昨日の晩も、夜な夜なこの二階の窓の近くへ忍び寄って、入れて貰おうかどうしようかと躊躇ためらいながら、中の様子をうかがっていたのかも知れない。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
もし我々の趣味がいわゆる人格の大部を構成するものと見傚みなし得るならば、作を通して著者自身の面影おもかげうかがう事ができると云ってもつかえないでありましょう。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は男が乗り換えさえすれば、自分も早速降りるつもりで、停留所へ来るごとに男の様子をうかがった。男は始終しじゅう隠袋かくしへ手を突き込んだまま、多くは自分の正面かわがひざの上かを見ていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
玄関には西洋擬せいようまがいの硝子戸ガラスどが二枚ててあったが、頼むといっても、電鈴ベルを押しても、取次がなかなか出て来ないので、敬太郎けいたろうはやむを得ずしばらくそのそばに立って内の様子をうかがっていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)