相容あひい)” の例文
相容あひいれざる二の岸の間にて、日にさからひて遠く延びゆき、さきに天涯となれる所を子牛線しごせんとなす 八五—八七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
哥沢節うたざはぶし」は時代のちがつた花柳界くわりうかいの弱いかこちを伝へたに過ぎず、「謡曲えうきよく」は仏教的の悲哀を含むだけ古雅こがであるだけ二十世紀の汽船とは到底相容あひいれざる処がある。
黄昏の地中海 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
口惜くちをしとの色はしたたかそのおもてのぼれり。貫一は彼が意見の父と相容あひいれずして、年来としごろ別居せる内情をつまびらかに知れば、めてその喜ぶべきをも、かへつてかくうれひゆゑさとれるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
われもとより善詩人は即好判者なりといふものならねど、自ら經營の難きを知るものは、みだり杓子定規しやくしぢやうぎうち振りて、枘鑿ぜいさくその形をことにして、相容あひいれざるやうなる言をばいかゞ出さむ。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
僕は、むしろ、伴先生とは、思想的には相容あひいれないところが多い。ただ、あの人物は面白いからね。先生の自由思想といふ奴は、非常に古風で、悠長だ。十六世紀的ヒューマニズムだ。
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
加越地方かゑつちはうこと門徒眞宗もんとしんしう歸依者きえしやおほければ、船中せんちうきやくまた門徒もんと七八めたるにぞ、らぬだにいまはしきの「一人坊主ひとりばうず」の、けて氷炭ひようたん相容あひいれざる宗敵しうてきなりとおもふより、乞食こつじきごと法華僧ほつけそう
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いにしへより英明の主、威徳宇宙にあまねく、万国の帰嚮ききやうするに至る者は、其胸襟きやうきん闊達くわつたつ、物として相容あひいれざることなく、事として取らざることなく、其仁慈化育の心、天下と異なることなきなり。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)