白墨チヨオク)” の例文
白墨チヨオクの粉に汚れた木綿の紋付に、裾の擦切れた長目の袴を穿いて、クリ/\した三分刈の頭に帽子も冠らず——かれは帽子もつてゐなかつた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
王室づき俳優の部屋が左右に設けられ、右手にモリエエル夫婦の部屋と先妻マドレエヌの部屋とが並び、扉には各俳優の名が白墨チヨオクで記されて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
かう云ふ言葉が使へるのは、現に白墨チヨオクを噛じつてゐる露西亜ロシアの子供があるばかりだ。我々大人には到底出来ない。
山鴫 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
のゝしるか、わらふか、ひと大聲おほごゑひゞいたとおもふと、あの長靴ながぐつなのが、つか/\とすゝんで、半月形はんげつがた講壇かうだんのぼつて、ツと一方いつぱうひらくと、一人ひとりまつすぐにすゝんで、正面しやうめん黒板こくばん白墨チヨオクにして
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
白墨チヨオクの粉に汚れた木綿の紋附に、裾の擦り切れた長目の袴を穿いて、クリ/\した三分刈の頭に帽子も冠らず——渠は帽子も有つてゐなかつた。
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
そこで何処へ行くのだといて見たら、白墨チヨオクを食ひ欠きに行くのですと云ふのだ。貰ひに行くとも云はなければ、折つて来るとも云ふのではない。食ひ欠きに行くと云ふのだね。
山鴫 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
最後さいごに、かたかしら一團いちだんつたとおもふと——隊長たいちやうおもふのが、つゝおもてそむけましたとき——いらつやうに、自棄やけのやうに、てん/″\に、一齊いちどき白墨チヨオクげました。ゆきむらがつてるやうです。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
埃と白墨チヨオクみた詰襟の洋服に着替へ、黒いボタンを懸けながら職員室に出て来ると、目賀田は、補布つぎだらけな莫大小メリヤスの股引の脛を火鉢にあぶりながら
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
痘痕あばただらけの、蟹の甲羅のやうな道化おどけた顔をして、白墨チヨオクの粉の着いた黒木綿の紋付に裾短い袴を穿いた——それが真面目な、教授法の熟練な教師として近郷に名の知れてゐる
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)