照々てらてら)” の例文
日の本の東西にただ二つの市の中を、徐々しずしずと拾ったのが、たちまちいなずまのごとく、さっと、照々てらてらとある円柱まるばしらに影を残して、鳥居際からと左へ切れた。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
吃驚びっくりして、ひょいと顔を上げると、横合から硝子窓がらすまど照々てらてらと当る日が、片頬かたほおへかっと射したので、ぱちぱちとまたたいた。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
せいの低い、色の黄色あおい、突張つっぱった、硝子ビイドロで張ったように照々てらてらした、つやい、その癖、随分よぼよぼして……はあ、手拭てぬぐいを畳んで、べったりかぶって。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今しがた一時ひとしきり、大路がかすみに包まれたようになって、洋傘こうもりはびしょびしょする……番傘にはしずくもしないで、くるま母衣ほろ照々てらてらつやを持つほど、さっと一雨かかった後で。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
牡丹ぼたんはしけたやうに、花の中を廻りめぐつて、奥へ続いた高楼たかどのの廊下づたひに、黒女くろめこしもと前後あとさきに三人いて、浅緑あさみどりきぬに同じをした……おもては、雪のが沈む……しろがねくし照々てらてら
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
祖母としよりに導かれて、振袖ふりそでが、詰袖つめそでが、つまを取ったの、もすそを引いたの、鼈甲べっこうくし照々てらてらする、銀のかんざし揺々ゆらゆらするのが、真白なはぎも露わに、友染ゆうぜんの花の幻めいて、雨具もなしに、びしゃびしゃと
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
晃然きらりとあるのを押頂くよう、前髪を掛けて、扇をその、玉簪ぎょくさんのごとく額に当てたを、そのまま折目高にきりきりと、月の出汐でしおの波の影、しずか照々てらてらと開くとともに、顔を隠して、反らした指のみ
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)