火先ひさき)” の例文
と、いってる声の下から、たちまち紅勘横丁へ火先ひさきが吹き出して来た。これは浅草の大通りだ。師匠の宅から正に半町ほど先である。
鸚鵡おうむ返しの声が終らぬうちに、忠一の持った松明の火先ひさきが左へ揺れると、一けんばかり下の大岩のあいだに又もや金色こんじきが閃いた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ここで教師は声に実感をこめようとして調子をさげた、「——火事がおこれば、火先ひさきの家を壊して火をくい止める、つまり、家一軒の犠牲で大火になるのを防ぐわけだ」
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
其時小さなまりのような物がと軒下を飛退とびのいたようだったが、やが雪洞ぼんぼり火先ひさきが立直って、一道の光がサッと戸外おもて暗黒やみを破り、雨水の処々に溜った地面じづらを一筋細長く照出した所を見ると
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
もはや、……少々せう/\なりとももつをと、きよと/\と引返ひきかへした。が、わづかにたのみなのは、火先ひさきわづかばかり、なゝめにふれて、しもなかかみ番町ばんちやうを、みなみはづれに、ひがしへ……五番町ごばんちやうはう燃進もえすゝことであつた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大火災だいかさいのときは、地震ぢしんとは無關係むかんけいに、旋風せんぷうおこちである。火先ひさきなかくぼ正面しようめんもつ前進ぜんしんするとき、そのまがかどには塵旋風ちりせんぷうづくべきものがおこる。また川筋かはすぢせつした廣場ひろば移動旋風いどうせんぷうによつておそはれやすい。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)