)” の例文
泰軒先生み声をはりあげて、お美夜ちゃんに、チョビ安のうたを習いながら、ブラリ、ブラリ、大道だいどうせましとやって来る。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
さっきから同じ葭簀よしずの蔭で、ざけをひっかけていた町人ていの、でっぷりと肥ったこわらしい男が、さっと追って来て
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
み声、破鐘のやうな声、かすれた声、頓狂な声、さういふ様々な声で語られる時、その印象は決して同一ではない。
「語られる言葉」の美 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
それが終るとばったりと静かになって、こんどは太いみ声が事務室の方から烈しく響いてきた。その声に誘われるようにわたしはそっと起きあがった。
三等郵便局 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
仁科にしなの炬燵にもぐり込んで白馬錦はくばにしきをのみながら、ばあさんのみ声でも聞くのが関の山かと思う。「仁科」はうどんや。「白馬錦」とは地酒の名である。
可愛い山 (新字新仮名) / 石川欣一(著)
と、その小柄な身体から出るとはとても思へない、幅のある、み声で云つた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
「奥様」とこの時、菊弥の背後うしろから、みた、底力のある声が聞こえてきた。
鸚鵡蔵代首伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼の声は少しみていますが、ところ/″\に葉蘭の葉の縁のように慄えがあって、暖かく寂しくあります。老人は眼をまじ/\させて聞いていますが大きな眼から涙をぽろり/\と零します。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ずっと前から軍楽隊の野外演奏の管弦楽かんげんがくや、イタリイのオペラなどいたり見たりしていたが、レコオドの趣味もようやくみた日本の音曲が、美しい西洋音楽と入れかわりかけようとしていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
真俯向まうつむきになっておもてを上げず、ものとも知らぬみたる声で
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
みごゑの講演起る。
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
はひめる暮雲ぼうんのかなた
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
昼顔の葉も花も、白いほこりをかぶって、砂地の原には、日蔭もなかった。その向うに見える家々は夜に入ると港の男のごえ絃歌げんかの聞える一劃だった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生前お関取りとまで綽名あだなされていただけあって、大兵肥満の撰十は、こうして歳暮せいぼの鮭のように釣り下がったところもなんとなく威厳があって、今にも聞き覚えのあるみ声で
はじめて往診に行つたときの相沢のみ声が耳によみがへつて来た。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
はひめる水路すゐろの靄に
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
と、今度はほんとに肩を抱いて起しかけましたが、それを聞くとどこかでまた、笑うらしいみ声がして
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外の石垣の下には、よくかがり舟がもやって、うかすると、船頭のみ声などもするから、船世帯の船頭の女房が、乳ぶさに、泣く子をあやして居るのであろう。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
張りしまっている心とは反対に、わざと間の抜けたみ声を流していった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
み声を淋しくひいて、二足三足あるきだしたのである。すると——すぐ。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
酔っぱらいのみ歌などが、寒さも知らずに沸いていたかと思われる。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、まなじりをさいて痛罵し、なお、み酒をあおっていいつづけた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、北国なまりみ声で
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)