洋刀サアベル)” の例文
双方聞合せて、仔細しさいが分ると、仕手方の先見あきらかなり、ステッキ差配おおやさえ取上げそうもないことを、いかんぞ洋刀サアベルうなずくべき。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
長崎屋の筋向うの玩具おもちゃ屋の、私はいい花客おとくいだった。洋刀サアベル喇叭らっぱ、鉄砲を肩に、腰にした坊ちゃんの勇ましい姿を坂下の子らはどんなにうらやましくねたましく見送ったろう。
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
「馬鹿をいえ、杖でさえ不可いけねえものが、洋刀サアベルで始末におえるかい。構うこたあない、みんなで押懸けて行ってあの軍鶏を引奪ひッたくッてしまうとするだ。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
するとかたはらから、またその光景やうすむすめふのには、「その巡査おまはりさんがね、洋刀サアベルを、カチヤ/\カチヤ/\ゆすぶつてわらつてた。」とします。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「ははあ、幾ら俺が手下を廻すとって、まさかそれほどの事では交番へも引張ひっぱり出せないで、一名制服を着けて、洋刀サアベルびた奴を従えて店前みせさきわめき込んだ。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
名は知らず、西洋種の見事な草花を真白まっしろな大鉢に植えて飾った蔭から遠くその半ばが見える、円形まるがた卓子テエブルを囲んで、同一おなじ黒扮装くろいでたち洋刀サアベルの輝く年少としわかな士官の一群ひとむれが飲んでいた。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お妻の胸元を刺貫き——洋刀サアベルか——はてな、そこまでは聞いておかない——返す刀で、峨々ががたる巌石いわおそびらに、十文字の立ち腹を掻切かっきって、大蘇芳年たいそよしとしの筆のさえを見よ、描く処の錦絵にしきえのごとく
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
巡査まわり様が階子はしごさして、天井裏へ瓦斯がすけて這込はいこまっしゃる拍子に、洋刀サアベルこじりあがってさかさまになったが抜けたで、下に居た饂飩うどん屋の大面おおづらをちょん切って、鼻柱怪我ァした、一枚外れている処だ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)