未熟みじゆく)” の例文
かれはこれが自分の本来だと信じてゐる。親爺おやぢの如きは、神経未熟みじゆくの野人か、然らずんばおのれをいつはる愚者としか代助には受け取れないのである。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わざ慇懃いんぎん應接あしらうて、先生せんせい拜見はいけんとそゝりてると、未熟みじゆくながら、御覽下ごらんくださいましとて、絹地きぬぢ大幅たいふくそれひらく。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
申なれば御武家の事ゆゑ浪人職らうにんしよくで劔術の道場を出すと云者か但し手習師匠てならひししやうでもなされては如何と云に市之丞は赤面せきめんの體にてまこと御恥おはづかしき事なるが劔術は甚だ未熟みじゆく竹刀しなへ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『そは時頼のぶんに過ぎたる仰せにて候ぞや。現在足助あすけ二郎重景など屈竟くつきやうの人々、少將殿の扈從こしようには候はずや。若年じやくねん未熟みじゆくの時頼、人にまさりし何ののうありて斯かる大任を御受け申すべき』
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
手のさき天窓あたまさきそろへ、どうめて閑雅しとやか辞儀じぎをして、かね/″\おまねきにあづかりました半田屋はんだや長兵衛ちやうべゑまうす者で、いたつて未熟みじゆくもの、此後こののちともお見知みしかれて御懇意ごこんいに願ひますとふと
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
のべざるも不忠ふちうと存候此儀私事には候はず天下の御爲おんためきみへの忠義ちうぎにも御座あるべく依てつゝまず言上仕り候越前儀未熟みじゆくながら幼少えうせうの時より人相にんさういさゝ相學あひまなび候故昨日あひへだち候へ共彼の方を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
成れ拙者は未熟みじゆくなれどもせがれの半四郎は古今の達人なりと御噺おはなし有しが其半四郎先生に今日御目おめかゝらんとはゆめさら存ぜざりしなり又其御身形おんみなりは如何なされし事やとひければ半四郎きゝて今も云通り某しは生質うまれつき容體なりふりには一向頓着とんぢやくせず人は容體みめより只心なり何國へ行にも此通り少しもかまはず只々蕩樂だうらくは酒を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)