時節柄じせつがら)” の例文
それといふのが、時節柄じせつがらあつさのため、可恐おそろしわるやまひ流行はやつて、さきとほつたつじなどといふむらは、から一めん石灰いしばひだらけぢやあるまいか。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
御米およねそでにして道具屋だうぐやまへまつた。ると相變あひかはらずあたらしい鐵瓶てつびん澤山たくさんならべてあつた。其外そのほかには時節柄じせつがらとでもふのか火鉢ひばち一番いちばんおほいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それというのが、時節柄じせつがら暑さのため、おそろしい悪い病が流行はやって、先に通った辻などという村は、から一面に石灰いしばいだらけじゃあるまいか。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けれども時節柄じせつがら頓着とんじゃくなく、当人の好尚このみを示したこの一色ひといろが、敬太郎には何よりも際立きわだって見えた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たとひ紋着もんつきはかま穿いても、これが反對うらはらで、女湯をんなゆ揚場あがりばに、はうだんると、時節柄じせつがら早速さつそくすぢから御沙汰ごさたがあるが、男湯をとこゆをんな出入でいりは、三馬さんば以來いらい大目おほめてある。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
隣と我々の住居すまいとの仕切になっているそこは、高さ一間ぐらいの土堤どてで、時節柄じせつがら一面のすすきおおかぶさっているのです。兄さんは近づいた私を顧みて、下の方にある薄の根を指さしました。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二三間離れた私にはそれが分らないくらい四囲あたりが暗いのでした。けれども時節柄じせつがらなんでしょう、避暑地だけあって人に会います。そうして会う人も会う人も、必ず男女なんにょ二人連ふたりづれに限られていました。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)