いだ)” の例文
彼にあつて自由に華やかに澄徹した調を送つた歌の鳥もすでに聲を收めて、いつしかその姿をかくした。こゝには孤獨の思ひをいだく島崎氏あるのみである。
新しき声 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
僕の耳には亡父なきちち怒罵どばの声が聞こえるのです。僕のには疲れはて身体からだを起して、何も知らない無心の子をいだき、男泣きに泣きたもうた様が見えるのです。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
あのにぎつたほか、あのむねいだいたほかむねのあつたことを想像さうぞうして、心臓しんざう鼓動こどうも一とまり、呼吸いきふさがつたやうにおぼえた。同時どうじ色々いろ/\疑問ぎもんむねおこつた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
二日過ぎて、ベルナルドオは我頸をいだき、我手をりていふやう。アントニオよ。今こそは我心を語らめ。桂冠の我頭に觸れたる時は、われは百千もゝちいばらもて刺さるゝ如くなりき。
大抵の詩人は一度は小説を書いて見ようという気構えを、いつも発作的にいだいているものだが、百田宗治も私が小説を書きはじめた時分に、二、三篇の小説を書いてそれを話していた。
我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
わが鴿はとよ、わが友よ、いざともにいだかまし。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いだきてきし濡髮ぬれかみの、これや、したたり。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
詩人は努力精進して別に深邃しんすゐなる詩の法門をくゞり、三眛の境地に脚をとゞめむとしてにはかにきびすをかへされた。吾人は「寂寥」篇一曲をいだいて詩人の遺教に泣くものである。
新しき声 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
われはまたが首をいだきしめ、擁きしめ
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
かたみにひといだきあひ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
「若菜集」を讀む前にませてゆがんだ或種の思想をいだいてればこそ他に無垢なる光明世界のあるのを見ないのであらう。輝けるわかき世——それが「若菜集」の世界である、嬥歌かゞひにはである。
新しき声 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
かろくいだけば手はかゆく
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
眞白手しかといだきて
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
いだきぬ、触れぬ、燃えなす願ひよ、
再びいだく、君と我。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
聖母は御子の寢すがたをいだきたまへり
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
われはまた君をいだきて泣くなめり
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
いだくはつよく張りし琴
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
さうかひなにかきいだ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)