手水場てうづば)” の例文
一日いちんちに十六手水場てうづばつたの一とうだつけが、なあに病氣びやうきなんぞにやけらツるもんかつちんだから、ときにや村落中むらぢうかたではあ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
私なぞの思ひ出せない小さい時分にその西洋間とお手水場てうづばが新築されたのだから、父がわかくてニューヨークから帰つて来た時分であつたらうか。
トイレット (新字旧仮名) / 片山広子(著)
板垣家の手水場てうづばで手を洗はうとするものは、誰でもが其処に置いてある湯沸サモワルの余り見馴れない恰好に先づ目をとめる。
押入の中、箪笥たんすの上、脱ぎ捨てた着物、一つも平次の目をのがれるものはありません。それが濟むと、縁側へ出て、便所の手水場てうづばの下をツクヅク眺めて居ります。
オイおくまどこへつたんだな、おくま、手水場てうづばか、めつぽふけえりやアがる、焚火たきびをしたまゝねえが今頃いまごろどこへつたのだらう、女房にようばう堅気かたぎにかぎるとふが
手水場てうづばへ行つて、その行き來に、階段のおり口の手すりぎはから、敷島の部屋を注意すると、あの屏風が立てまはされてゐるのだらう、その影らしいのが障子に映つてゐて
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
手水場てうづば出来いできし貫一は腫眶はれまぶたの赤きを連𥉌しばたたきつつ、羽織のひもを結びもへず、つと客間の紙門ふすまひらけば、荒尾は居らず、かの荒尾譲介は居らで、うつくしよそほへる婦人のひと羞含はぢがましう控へたる。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
家の人たちはそれを「お手水場てうづば」と言つて、家庭用の上下かみしものそれを簡単に「はばかり」と言つてゐた。
トイレット (新字旧仮名) / 片山広子(著)
でふ座敷ざしき借切かりきつてゐると、火鉢ひばちはここへくよ、烟草盆たばこぼんくよ、土瓶どびんしてやる、水指みづさしもこゝにるは、手水場てうづばへは此処こゝからくんだ、こゝへ布巾ふきんけてくよ
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
平次は手水場てうづばから歸つて來て、さて寢ようとすると
そのじうたんを上草履で踏んで右手の壁のまん中にある三尺巾の引戸を開けると、そこが本当のお手水場てうづばであつた。西にやや高い窓がずうつと一間だけ通して開いてゐた。
トイレット (新字旧仮名) / 片山広子(著)
兄振あにいぶつたことをふな、おれが手をいてやらなけりやア何処どこへもかれめえ、御飯おまんま世話せわから手水場てうづばくまでおれいてツてやるんだ、月給げつきふを取るんぢやアなし、んぞとふと小言こごとやアがる
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「お手水場てうづばぢやないか」