所作事しょさごと)” の例文
所作事しょさごとは源之助の得意とするところではないので、先代菊五郎が、「茨木」「戻橋」「土蜘蛛」など沢山の所作事しょさごとをしているのはうつさなかった。
役者の一生 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
歌舞伎の所作事しょさごとの物売と言えば、まず、乗合船の『白酒売しろざけうり』。法界坊の『荵売しのぶうり』。それから団扇売、朝顔売、蝶々売。
顎十郎捕物帳:22 小鰭の鮨 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それは近江のおかねである。この女のことは江戸時代に芝居しばい所作事しょさごとなどにも出ているし、絵草子にもえがかれている。
大力物語 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
わたくしはこの時の強い印象によって、天平時代に伎楽面を用いた伎楽が、音楽と舞踏とから成る所作事しょさごとであったに相違ないという考えを抱きはじめた。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
下女どもはそれは何の所作事しょさごとかと尋ぬると、われは人間のゴリラであると飛んでもない言を吐いたから、下女ども大いに驚き用心して爾来ろくに近寄らず。
その月の芝居では「松朝扇ときわのいろおうぎのうつし絵」という、大切おおぎり所作事しょさごとに出るだけで、前借りがたまっているため、給金も半分止めになっていたし、座敷の数も少なかった。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
五郎作は独り劇をることを好んだばかりではなく、舞台のために製作をしたこともある。四世彦三郎ひこさぶろう贔屓ひいきにして、所作事しょさごとを書いて遣ったと、自分でいっている。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
藤浪君は所作事しょさごと丈けを慎んだ。大地に平伏ひれふしたりすると、ロケーションだと思って、人群ひとだかりがする。
善根鈍根 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
七十になる彼女は、中幕なかまく所作事しょさごと浅妻船あさづまぶね」の若い女にふんそうとしているところだった。
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
字句の妙味や、技巧や主題などそれが何になるものであろう。何と弁護してもそれは有閑階級の所作事しょさごとたるにすぎない。ほんとうの芸術、ほんとうの文化は革命的精神の中にある。
童話に対する所見 (新字新仮名) / 小川未明(著)
所作事しょさごと道成寺入相鐘どうじょうじいりあいのかね」——怪しげな勘亭流かんていりゅう、それを思い切って筆太に書いた下には、うろこ衣裳いしょうを振り乱した美しい姫、大鐘と撞木と、坊主が数十人、絵具が、ベトベトとしてなまな色。
また巴里パリー人ジヨオ蒐集板画目録中岩井半四郎いわいはんしろう座頭ざとうふんせる所作事しょさごとの図あり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
優婉ゆうえんで、美しい。「掟きびしき白玉の、露にも濡れしことはなく」——色恋を法度はっととして遮断されていた初心うぶな御殿女中が、はじめて知った男への恋慕のきびしさに、とりのぼせる所作事しょさごとらしい。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
巫女 座頭俳優ざがしらやくしゃ所作事しょさごとで、道成寺どうじょうじとか、……申すのでござります。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
だがな、明日もここで、『辻のお地蔵さん』の所作事しょさごとをお眼にかけるから、お知りあいの方々おさそい合わせのうえ、にぎにぎしく御見物のほどを……ナンテ、さア、お美夜ちゃん。巣へけえろうなあ。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
丁度ちょうど番目ばんめの、所作事しょさごとまくちけ時分じぶんだとおもいねえ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
見たりし盆興行は団菊両優は休みにて秀調しゅうちょう染五郎そめごろう家橘かきつ栄三郎えいざぶろう松助まつすけら一座にて一番目は染五郎の『景清かげきよ中幕なかまくは福地先生新作長唄所作事しょさごと女弁慶おんなべんけい』(秀調の出物だしもの)二番目家橘栄三郎松助の「玄冶店大喜利げんやだなおおぎり」家橘栄三郎の『女鳴神おんななるかみ常磐津ときわず林中りんちゅう出語でがたりなりき。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
まち所作事しょさごと
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)