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愛敬
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あいきょう
ふりがな文庫
“
愛敬
(
あいきょう
)” の例文
なるほどそう云われて見れば、あの
愛敬
(
あいきょう
)
のある田中中尉などはずっと前の列に加わっている。保吉は
匇々
(
そうそう
)
大股
(
おおまた
)
に中尉の側へ歩み寄った。
文章
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
気にしながら
栄
(
は
)
えぬものは浮世の義理と
辛防
(
しんぼう
)
したるがわが前に余念なき小春が
歳
(
とし
)
十六ばかり色ぽッてりと白き丸顔の
愛敬
(
あいきょう
)
溢
(
こぼ
)
るるを
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
鋭い目に
愛敬
(
あいきょう
)
のある末造が、上品な、目立たぬ好みの支度をしているのを見て、捨てた命を拾ったように思って、これも
刹那
(
せつな
)
の満足を覚えた。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
三十前後の顔はそれよりも
更
(
ふ
)
けたるが、鋭き眼の
中
(
うち
)
に言われぬ
愛敬
(
あいきょう
)
のあるを、客
擦
(
ず
)
れたる
婢
(
おんな
)
の一人は見つけ出して口々に友の
弄
(
なぶ
)
りものとなりぬ。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
唇
(
くちびる
)
と、眼とに、無限の
愛敬
(
あいきょう
)
を
湛
(
たた
)
えて、黒いろ
絽
(
ろ
)
の、無地の夏コートを着て、ゆかしい印象を残してその女は去った。
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
▼ もっと見る
六白に生まるる人は、
愛敬
(
あいきょう
)
うすく、親戚、朋輩の交わり絶ち、かつ
吝嗇
(
りんしょく
)
の心あるがゆえに、人にうとまるるなり。もっとも、その性質朴なるものなり。
妖怪学
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
初対面の
愛敬
(
あいきょう
)
をうかべて上を仰いだ僕は鼻の先一尺ばかりのところに現われた美しい少女の
面
(
おもて
)
を見つめたまま急に顔面を
硬直
(
こうちょく
)
させなければならなかった。
階段
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「
徳若
(
とくわか
)
に
御万歳
(
ごまんざい
)
と、
御代
(
みよ
)
も栄えまします、ツンテントン、
愛敬
(
あいきょう
)
ありける
新玉
(
あらたま
)
の、………」
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
南方先生その何やらのふちから
溢
(
あふ
)
るるばかりの大
愛敬
(
あいきょう
)
に鼠色の
涎
(
よだれ
)
を垂らして、生処を尋ねると、足尾の的尾の料理屋の娘というから十分素養もあるだろう、どうか一緒に走り大黒
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
それからまた池にはいったと思うとせわしなく水中にもぐり込んでは底の
泥
(
どろ
)
をくちばしでせせり歩く。その水中を泳ぐ格好がなかなか
滑稽
(
こっけい
)
で
愛敬
(
あいきょう
)
があり到底水上では見られぬ異形の
小妖精
(
しょうようせい
)
の姿である。
あひると猿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
念のためにもう一度繰り返すと、顔は美人と云うほどではない。しかしちょいと鼻の先の上った、
愛敬
(
あいきょう
)
の多い
円顔
(
まるがお
)
である。
お時儀
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
痩
(
や
)
せ姿の
面
(
めん
)
やうすご味を帯びて、唯
口許
(
くちもと
)
にいひ難き
愛敬
(
あいきょう
)
あり、
綿銘仙
(
めんめいせん
)
の
縞
(
しま
)
がらこまかき
袷
(
あわせ
)
に
木綿
(
もめん
)
がすりの羽織は着たれどうらは定めし
甲斐絹
(
かいき
)
なるべくや
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
勝久はかつて砂糖店を出していたことはあっても、今いわゆる
愛敬
(
あいきょう
)
商売の師匠となって見ると、自分の物馴れぬことの甚しさに気附かずにはいられなかった。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
『体源抄』十巻練習事条に
少
(
ちいさ
)
御前が歌はカワラケ音にて非愛にヒタタケて誠の悪音なり、しかも毎調に
愛敬
(
あいきょう
)
ありてめでたく聞えしは本性の心賢き上によく力の入るが致すところなり云々
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
可愛らしい顔といえば、彼女の
愛敬
(
あいきょう
)
のある話をきいたことがある。彼女はあるおり某氏をたずねて、女優になりたいが鼻が低いからとしきりに気にしていた。
松井須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
田中中尉は
口髭
(
くちひげ
)
の短い、まろまろと
顋
(
あご
)
の二重になった、
愛敬
(
あいきょう
)
のある顔の持主である。
文章
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
僕はその時リオナルドオ・ダア・ヰンチのかいたモンナ・リザの画を思い出した。お客に褒められ、友達の折合も好い、
愛敬
(
あいきょう
)
のあるお蝶が、この内のお上さんに気に入っているのは無理もない。
心中
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
漁師言葉のあらくれたのも
愛敬
(
あいきょう
)
に、愛されて、幸福に、
華
(
はな
)
やいだ生涯の来るのを待っていたが、花ならばこれから咲こうとする十六の年に、暗い運命の一歩にふみだした。
柳原燁子(白蓮)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
この時十七八の、不断着で買物にでも
行
(
い
)
くというような、
廂髪
(
ひさしがみ
)
の一寸
愛敬
(
あいきょう
)
のある娘が、袖が障るように二人の傍を通って、純一の顔を、気に入った心持を隠さずに現したような見方で見て行った。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そして伊藤公は——かなりな
我儘
(
わがまま
)
をする人だというので憎み
罵
(
のの
)
しるものもあればあるほど、
畏敬
(
いけい
)
されたり、
愛敬
(
あいきょう
)
があるとて
贔屓
(
ひいき
)
も強かったり、ともかくも明治朝臣のなかで
巍然
(
ぎぜん
)
とした大人物
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
“愛敬”の意味
《名詞(1)》
愛 敬 (あいきょう, あいぎょう 別表記:愛嬌)
表情などにかわいげがあること。
人のかわいらしさ。
人をひきこむときに意図的に発する感情。
(接頭辞「御」を付けて)商店や座などで、興を添えるもの。サービス。
(出典:Wiktionary)
愛
常用漢字
小4
部首:⼼
13画
敬
常用漢字
小6
部首:⽁
12画
“愛敬”で始まる語句
愛敬者
愛敬笑
愛敬毛
愛敬詞
愛敬靨