おど)” の例文
一体、外套氏が、この際、いまの鹿落の白い手を言出したのは、決して怪談がかりに娘をおどかすつもりのものではなかった。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……ついあひだとんさんにつて、はなしると、十圓じふゑんおどかすより九九九くうくうくうはうが、音〆ねじめ……はいきぎる……耳觸みゝざはりがやはらかで安易あんいい。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やつと二歳ふたつ嬰兒あかんぼだが、だゞをねてことかないと、それ地震ぢしんるぞとおやたちがおどすと
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
アハハハと笑って、陽気におどかす……その、その辺を女が通ると、ひとりでに押孕おっぱらむ……
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「貧乏神が抜け出す前兆しらせか、恐しくおどされるの、しっかりさっししっかりさっし。」
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
誰か趣向をしたんだね、……もっとも、昨夜ゆうべの会は、最初から百物語に、白装束や打散ぶっちらしがみで人をおどかすのは大人気無い、にしよう。——それで、電燈でんきだって消さないつもりでいたんだから。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ただおどかしばかりでもなさそうな、秘密と、奇異と、第一、人気のまるでないその祠に、入口にかかった薙刀なぎなたを思うと、掛釘が錆朽さびくちていまいものでもなし、控えの綱など断切れていないと限らない。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……思出おもいだしても気味の悪い処ですから、耳は、とがり、目は、たてに裂けたり、というのが、じろりとて、穂坂の矮小僧ちびこぞうおどかしてろう、でもって、魚市の辻から、ぐるりと引戻ひきもどされたろうと
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いいえさ、おどかすんじゃあない。そこで、いきなり開いたんだと、余計驚いたろうが——開いていたんだよ。ただし、開いていた、その黒い戸の、裏桟に、白いものが一条ひとすじ、うねうねとつたわっている。」
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)