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こつえん
ふりがな文庫
“
忽焉
(
こつえん
)” の例文
子どものかどわかし!——どういう子どもをどこへ売ったか、大きななぞの雲が
忽焉
(
こつえん
)
として目の前に舞い下がってきたのです。
右門捕物帖:33 死人ぶろ
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
ついに非望の
遂
(
と
)
げられないことを
悟
(
さと
)
った紀昌の心に、成功したならば決して生じなかったに
違
(
ちが
)
いない道義的
慚愧
(
ざんき
)
の念が、この時
忽焉
(
こつえん
)
として
湧起
(
わきおこ
)
った。
名人伝
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
未だその成功を得ざるうちに
忽焉
(
こつえん
)
として中尉の長逝を見ましたことは我々の最も痛恨極まりなきところであります。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
無人の境に
忽焉
(
こつえん
)
として現出する氷の宮殿ならば、嘆賞しておくだけで済むが、この現象がトンネルの掘ってある山などに起きると、話が面倒になってくる。
永久凍土地帯
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
ルパンが眼前に閉された
垂帳
(
カアテン
)
は
豁然
(
かつぜん
)
として開かれた。彼が今日まで黒暗々裡に、暗中模索に捕われていた迷宮に、
忽焉
(
こつえん
)
として一道の光明が現れたのを覚えた。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
▼ もっと見る
今まで
衒学
(
げんがく
)
と傲慢、偽善と陰険とで固められた宗教家、政治家、学者たちと激しく論戦せられたイエスの眼前に、この敬虔なる貧しき姿が
忽焉
(
こつえん
)
として浮かみ出たのは
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
誰かはこれを指して旅という。かかる旅は夢と異なるなきなり。出ずるに車あり食うに肉あり。手を
敲
(
たた
)
けば盃酒
忽焉
(
こつえん
)
として前に
出
(
い
)
で財布を
敲
(
たた
)
けば美人
嫣然
(
えんぜん
)
として後に現る。
旅の旅の旅
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
居常唯だ書籍に埋もれ、味なき哲理に身を呑まれて、
徒
(
いたづ
)
らに遠路に
喘
(
あへ
)
ぐものをして、
忽焉
(
こつえん
)
、造化の秘蔵の巻に向ひ不可思議の妙理を
豁破
(
くわつぱ
)
せしむるもの、夏の休息あればなり。
客居偶録
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
いや、ほんとうはこうして二人から離れ、私ひとり窓のそとの景色に
忽焉
(
こつえん
)
としているというのは、そのときのわが姿を、なん年振りかで眼に描いて、なつかしみたかったからである。
酒徒漂泊
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
刎
(
は
)
ね飛ばされて不二は一たび
揺曳
(
えうえい
)
し、二たびは青木の林に落ちて、影に吸収せられ、地に消化せられ、
忽焉
(
こつえん
)
として見えずなりぬ、
満野
(
まんや
)
粛
(
しゆく
)
として秋の気を
罩
(
こ
)
め、
騎客
(
きかく
)
草間に出没すれども
霧の不二、月の不二
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
このとりとめなき空想能く何事をか
做
(
な
)
し出さん。こゝに在りと見れば、
忽焉
(
こつえん
)
としてかしこに在り。汝は才といふか。才果して何をかなさん。眞の詩人の貴むところは、心の上の鍛錬なり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
(三六)
暴
(
ばう
)
を
以
(
もつ
)
て
暴
(
ばう
)
に
易
(
か
)
へ、
其
(
そ
)
の
非
(
ひ
)
なるを
知
(
し
)
らず。
神農
(
しんのう
)
・
虞
(
ぐ
)
(舜 )・
夏
(
か
)
(禹 )
(三七)
忽焉
(
こつえん
)
として
沒
(
ぼつ
)
しぬ、
(三八)
我
(
われ
)
安
(
いづ
)
くにか
適歸
(
てきき
)
せん。
吁嗟
(
ああ
)
(三九)
徂
(
ゆ
)
かん。
(四〇)
命
(
めい
)
の
衰
(
おとろ
)
へたるかな
国訳史記列伝:01 伯夷列伝第一
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
その時
忽焉
(
こつえん
)
として、二十五—二十七節の大思想が彼に光の如く臨んだ。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
忽焉
(
こつえん
)
としていずれかへ消滅してしまったものでしたから、いかな捕物名人も、これにはいたくめんくらったようでしたが、と、——そのときまさしく裏の
右門捕物帖:15 京人形大尽
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
その大都市が、ぶうんぶうんと
虻
(
あぶ
)
の飛び交っているこの山中の真昼の睡った空気と瑠璃色の空の下に、今
忽焉
(
こつえん
)
としてその全貌を
晒
(
さら
)
け出しているのであった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「
蝮
(
まむし
)
の
裔
(
すえ
)
よ、誰が汝らに、来たらんとする御怒りを避くべきことを示したるぞ。さらば悔い改めにふさわしき
果
(
み
)
を結べ」(マタイ三の七、八)と叫びし預言者の声は
忽焉
(
こつえん
)
として絶え
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
当時の日本の武蔵野の一隅に
忽焉
(
こつえん
)
として現われるはずはないので、何かこの書が出るには、それだけのものを産むべき学問の流れがあったにちがいないということは誰にも考えられる。
『雪華図説』の研究後日譚
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
と、泣いて独語したが見る間に、少年は
忽焉
(
こつえん
)
として消え失せたという。
支那の狸汁
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
馬を
牽
(
ひ
)
いて過ぎゆく
傖夫
(
そうふ
)
を目送するに、影は三丈五丈と延び、大樹の折るる如くして、かの水に落ち、
忽焉
(
こつえん
)
として聖火に冥合す、彼大幸を知らず、知らざるところ、彼の最も大幸なる
所以
(
ゆえん
)
なり、ああ
山を讃する文
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
まことにそれは
忽焉
(
こつえん
)
として先の日消えてなくなったむっつり右門で、右門は伝六のうれし泣きに泣いている姿を静かに見おろすと、涼しそうにいいました。
右門捕物帖:03 血染めの手形
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
せめて
浪華
(
なにわ
)
あたりにその姿を現すだろうと思われたのに、いとも好もしくいとも
冴
(
さ
)
えやかなわが早乙女主水之介が、この上もなく退屈げなその姿を再び
忽焉
(
こつえん
)
として現したところは
旗本退屈男:05 第五話 三河に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
忽
漢検準1級
部首:⼼
8画
焉
漢検1級
部首:⽕
11画
“忽焉”で始まる語句
忽焉易簀