ふたた)” の例文
土耳古帽氏はふたたび畠のそばから何かって来て、自分の不興を埋合うめあわせるつもりでもあるように、それならこれはどうです、と差出してくれた。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
然るに一たび星巌の西より還り来って江湖旧社の跡を尋ね、更に吟社を興すにおよんで玉池の名はふたたび詩人の間に言いつたえられるようになった。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
一四四いづれ消息せうそこを見ずばあらじとて、ふたたび山にのぼり給ふに、一四五いかさまにも人のいききえたると見えて、去年こぞふみわけし道ぞとも思はれず。
饒舌しゃべりながら母親がくんで出す茶碗ちゃわんはばかりとも言わずに受取りて、一口飲で下へ差措さしおいたまま、済まアし切ッてまたふたたび読みさした雑誌を取り上げてながめ詰めた、昇と同席の時は何時でもこうで。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
諸比丘それは大徳病気の療治に蓄えたのだから棄つるなかれと言うと、舎利弗われこの少しの物を持ったばかりに梵行人をして我を怪しましめたは遺憾なり、捨てた物はふたたび取れぬと答えた。
一日太孫をして詞句しく属対ぞくたいをなさしめしに、おおいかなわず、ふたたび以て燕王えんおうていに命ぜられけるに、燕王の語はすなわち佳なりけり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
僧のこころにまかせよとて、ふたたび物をもいはず。こなたよりも一ことを問はで、あるじのかたはらに座をしむる。
「風雨止マズふたたビ長句ヲ賦ス。」と題する作に枕山はその妻の病のようやく重くなった事を言っている。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
鐘塔に還って騎馬しふたたび綱を走り降った(ホーンの『机上書テーブルブック』五四〇頁)。
秀吉が政宗の帰国を許したに就ては、秀吉の左右に、折角山を出て来た虎をふたたび深山に放つようなものである、と云った者があるということだ。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ふたたびかしこに行きて念比ねんごろにとぶらひ給へとて、杖をきてさきに立ち、相ともにつかのまへにして声をげて嘆きつつも、其の夜はそこに念仏して明かしける。
故ヲ以テ改メテ期ヲすみやかニセンコトヲ図ル。慈おおいニ喜ビ陽ニ快キノ状ヲナス。然レドモ僅ニ稀粥きしゅくヲ通ズルのみ。途ニ上ルノ日ふたたビ慈顔ヲ奉ズルコト能ハザルヲ知リ、話シテときヲ移ス。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
名誉知識を欲する者は尚他日ふたたび背負投を食わされる、その名誉知識を獲得した暁の気づかわれる事であるが、これは中々満足を得難いものであるから
貧富幸不幸 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一度ひとたび愕然ぎょっとして驚いたが耳を澄まして聞いていると、上の方からだんだんと近づいて来るその話声は、ふたたび思いがけ無くもたしかに叔父の声音こわねだった。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
殿ふたたびお出ましの時には、小刀を取って、危気あぶなげ無きところをずるように削り、小々しょうしょう刀屑かたなくずを出し、やがて成就のよしを申し、近々ご覧に入るるのだ。何の思わぬあやまちなどが出来よう。ハハハ。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかしどうした事かその少年にふたたび会うことはなかった。
蘆声 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
客はふたたび涙の眼になった。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)