強者つわもの)” の例文
あゝ云えばこう云うという口では千軍万馬の強者つわものと見てとったから、お槙に向って真ッ正面から何をきいたところで埒はあかない。
目を見合せては流石に哀れに堪兼ねて立退くものもあったが、鳴き居るは、などとかえって興じ笑いつつ猶もむしり立てる強者つわものもあった。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
顔もあげ得ずに——しかもこの荒々しい強者つわものが、涙で顔をいっぱいに汚して、その顔も上げ得ずにひれ伏しているではないか。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この男は村一番の強者つわもので、ある時村の一番強い牛と喧嘩けんかをして、その牛の角をへしり、あばらぼね蹴破けやぶって見事みごとたおしてしまったことのある男であった。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
二十数番取り進んで、きょうの結び相撲である浦柄村の杢平もくへい牛と、大内村の孫七牛とが東西から巨姿を現わした。杢平牛は数年間横綱を張っている戦場往来の古強者つわものだ。
越後の闘牛 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
八つまではなだへうちこむ五斗兵衛ごとべえ末胤まついん酔えば三郎づれが鉄砲の音ぐらいにはびくりともせぬ強者つわものそのお相伴の御免こうぶりたいは万々なれどどうぞ御近日とありふれたる送り詞を
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
この老練な新劇界の古強者つわものは、臆する色もなく、椅子を引き寄せた。彼はずんぐりとした胴に牡牛のような頸を載せていて、精悍そうな、それでいて、妙に策のありそうな四十男だった。
オフェリヤ殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ここにも狼の百疋は立処に裂いて棄てる強者つわものが控えておると、口から出任せ吹き立つるに、得右衛門はあてられて、「豪気々々えらいえらい、その口で歩行あるいたら足よりは達者なものだ。さあこうかい。 ...
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
だから、国々から選ばれる力士も、その国で無双むそう強者つわものだったのである。
大力物語 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「聚楽第には強者つわものもござる。貴殿お一人に荒らされるほどの、不用心のことは致して居らぬ! あまりに自己をお頼みなさるな! またそれほどにも聚楽第を、力弱きものとお思いなさるな!」
血ぬられた懐刀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
なんしろあの中へ北条氏が関八州の強者つわもの八万騎を入れて八カ月を持ちこたえ、太閤が天下の兵二十万を以てこれを囲んだと云うのですから、徳川氏になってからの小田原城とは規模がちがいましょう
ゆうゆう、右にかわして、さッと鉄杖にすんのびをくれて横になぐ。あな——とおもえば佐分利さぶりも一かどの強者つわもの、ぽんとんで空間くうかんをすくわせ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、畑中は無類に豪気の海の強者つわもの、実際は慾心よりも冒険心にうずかれたのだ。正直のところが、真珠採りとシャレてみようじゃないかという豪快な遊び魂が頭をもたげての話であった。
丹波守自ら鑓をとって先頭に進み、騎馬の強者つわもの真先に立って殺到した。
姉川合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
佐脇藤八郎は、年少なので、大勢の強者つわものばらの中に、うずまっているようにじっていたが、信長に呼ばれると
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いっぱしわれも坂東侍の強者つわものと、大人びた豪傑気どりを持っていたものでおざったが、ひとたび、発心ほっしんして、念仏門に心の駒をとめてからは、回顧のことども
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
城内七百の強者つわものばらの耳へもはらわたへも鳴って行ったとみえて、長亭軒の城、松尾山の松籟しょうらいは、一瞬、しいんと静寂しじまに冴えて、ただ琴の音と、琴の歌があるばかりだった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どっちも酒にかけては一かどの巧者こうしゃ強者つわもの、酒戦の勝負はいつ果つべしとも見えなかった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一ぽうの中庭からほのかな日光ははいるが、座中陰惨いんさんとしてうす暗く、昼から短檠たんけいをともした赤い光に、ぼうと照らしだされた者は、みなこれ、呂宋兵衛るそんべえの腹心の強者つわものぞろい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
良人は、打物うちもの取っては、強者つわものですから、そッと、まくらに近づき、濡れ髪がお手に触れたら、さそくの一太刀で、首打ち落してしまうことです。ゆめ、打ち損じてくださいますな
信長は、味方の強者つわものが、自分のそばを追い越して、まっしぐらに行く姿を見ると云った。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一族や、家臣のともがらにしても、みなこれ、かつて甲山こうざん強者つわものであり、すくなくも天目山てんもくざん以前までは、織田も徳川も何する者ぞ——と、信玄盛時せいじの自尊心はなお高かった者どもである。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主将は、木曾方でも聞えのある根井行親ゆきちかだし、部下にも強者つわものは少なくなかった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はなおどしの草ずりをゆりうごかして、戞々かつかつと、退いて来た強者つわものがある。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一方、張飛、関羽の両将に、幕下の強者つわものと、朱雋軍の一部の兵を率きつれた玄徳は、峡門から十里ほど北方の絶壁へひそかに這いすすみ、惨澹たる苦心のもとに、山の一端へじ登ることに成功した。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おう、山寨さんさい第一の強者つわものとどろき又八の鉄棒をくらっておけ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
涙の強者つわもの
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)