幻覚げんかく)” の例文
旧字:幻覺
煽動あふり横顔よこがほはらはれたやうにおもつて、蹌踉よろ/\としたが、おもふに幻覚げんかくからめた疲労ひろうであらう、坊主ばうず故意こいうしたものではいらしい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
現わしたのであろうか? あるいはまた少年に起り易い幻覚げんかくの一種に過ぎなかったのであろうか? それは勿論彼自身にも解決出来ないのに違いない。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
清原 その次に確実な症状は幻覚げんかくと云う奴なんだよ。雲斎先生もそう云ってらしたが、この症状が現れて来るようになったら、もう救い道はないんだそうだ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
お通の胸にも、お通の知らない幻覚げんかくだけの親たちがいて、こうしている間も絶えず、呼びかけたり呼びかけられたりしているらしいが、彼女は、その骨肉こつにくの愛も知らない。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、こんなさいに、どうしてか、いつか病院びょういんまどからた、あおぎりの幻覚げんかくかんだ。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
私は、ときどき灰色の雲の低くれ下った川岸に、ちゃんちゃんこを風に吹かせながら、うしろ向きに立っている子供の姿を幻覚げんかくの中にハッキリ見るようになっていた。生命の河である。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
はては空いつぱいに飛び廻る真蒼まつさをな太陽の幻覚げんかく
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
少々せう/\怪我けがぐらゐはする覚悟かくごで、幻覚げんかく錯視さくしかとみづかあやしむ、そのみづいろどりに、一だんと、えだにのびて乗出のりだすと、あま奇麗きれいさに、くらんだのであらう。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかしマネエジャア、同僚、山井博士、牟多口氏等むだぐちしらの人びとはいまだに忍野半三郎おしのはんざぶろうの馬の脚になったことを信じていない。のみならず常子の馬の脚を見たのも幻覚げんかくに陥ったことと信じている。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
燐色りんいろに光る文字を脳膜のうまくへ描いているかのような幻覚げんかくだった。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幻覚げんかくをさまると、朱紅しゆべにのやうに
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あッとおどろいたのは、一瞬の幻覚げんかくである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)