山猿やまざる)” の例文
「掌どころか、すでに三十万里の遠くに飛行して、柱にしるしをとどめてきたぞ!」「愚かな山猿やまざるよ!」と如来は笑った。
それをからかいにきた山猿やまざるか? 山猿のいたずらか? いやそうでもない、やはり、さる忍剣にんけんにささやくのであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それはそうと、おれは甲府から出てきたばかりの山猿やまざるで、船送りなんてえものを見たことがないが、船送りというのは、いったいどんなことをするものだ」
顎十郎捕物帳:13 遠島船 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
……これでございますから、何の木曾の山猿やまざるなんか。しかし、念のために土地の女の風俗を見ようと、山王様御参詣ごさんけいは、その下心だったかとも存じられます。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「こんな話があるで。」と佐吉もひざをかき合わせて、「木曾福島の山村様が江戸へ出るたびに、山猿やまざる、山猿と人にからかわれるのが、くやしくてしかたがない。 ...
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
みづうつつきうばはんとする山猿やまざるよ、無芸むげい無能むのうしよくもたれ総身そうみ智恵ちゑまはりかぬるをとこよ、よつうをもとくさうつへびをどろ狼狽うろたへものよ、白粉おしろいせて成仏じやうぶつせんことねが艶治郎ゑんぢらう
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
ともかく大昔おほむかし人間にんげんは、森林しんりんんで、くさや、や、野獸やじゆうや、かはさかななどをとつて、なまのまゝでべてゐたもので、ちょうど今日こんにち山猿やまざるのような生活せいかつをしてゐたのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
ひよつくり山猿やまざるあかかほ
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
「や?」と小文治は身がまえて見ると、およそ五、六十ぴきの山猿やまざるの大群である。そのなかに、十さいぐらいな少年がただひとり、鹿しかの背にのって笑っている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬籠の半蔵と競い合って、木曾の「山猿やまざる」を発揮しようという年ごろだ。そのそばに立っていて、混ぜ返すような声をかけるのは、寿平次から見れば小父おじさんのような得右衛門である。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
つる/\のぼつて山猿やまざる
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
「知れたことよ。だれが、てめえみてえな山猿やまざるに、ただペコペコするやつがあるものか!」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「彼も今では北佐久郡の居候いそうろう山猿やまざるにしてはちと色が白過ぎるまで」
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
やれ/\ひどい山猿やまざる
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
やれやれ、おれもこれでき返ったというものだ。きょうは久しぶりで木曾の山猿やまざるに帰った。お前のおっかさん(お民)もあれで痔持ちだが、このおれの清々せいせいしたこころもちを分けてやりたいようだ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)