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屋號
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やがう
どこの
田舍にもあるやうに、
父さんの
村でも
家毎に
屋號がありました。
大黒屋、
俵屋、
八幡屋、
和泉屋、
笹屋、それから
扇屋といふやうに。
夜は(
川)の
字に
並んだその
屋號に、
電燈がきら/\とかゞやくのであらうも
知れない。あからさまにはいはないが、これは
私の
知つた
𢌞米問屋である。
この
漢と
比て
見ると
流石のブリダアの
市人も
餘程の
勤勉の
民と
言はんければならない、
何にしろラクダルの
豪い
證據は『
怠惰屋』といふ
一個の
屋號を
作つて
了つたのでも
了解る、
綉工とか
珈琲屋とか
屋號、
樓稱(
川。)と
云ふ
字、(
松。)と
云ふ
字、
藍に、
紺染、
暖簾靜に(
必。)と
云ふ
形のやうに、
結んでだらりと
下げた
蔭にも、
覗く
島田髷は
見えなんだ。
屋號といふものは、その
家々の
符牒のやうに
思はれて
居るものでした。